コラム6 作品を人に否定されても

 あなたは自作品を他人に否定されたことってありますか?
足蹴にされてバカにされて、それでも創作を続けられますか?

 こんにちは。九灯兄妹の妹のほう、小膳です。
noteとムーンライトノベルズでBL小説を書いています。

 今回はわたしの小説が否定されたときのことを書きます。

連続一次落ち

 BL小説を書き始めるより以前、わたしはミステリもどきというか、そんなような小説を書いていました。

 せっせと書いては色んな賞に投稿していたんですけれど、ことごとく一次選考で落ちていました。
唯一の戦績は『メフィスト』という雑誌で評価され、編集さんから電話をもらったくらいでしょうか。
まあ連絡はその一回だけでしたけどね……

 丹精込めて書いた小説を送り、わくわくしながら発表を待ち、買ってきた文芸雑誌の選考通過者一覧で自分のPNの名を探し、それが見つからないとひどく落ち込んだものです。
自分の体がカラッポになるようなあの絶望感はちょっと言葉にできません。

だってほかに自慢できることがないんだもの

 わたしに何かほかに自慢できるものがあったら、ここまでのダメージはなかったはずです。
「小説はダメだけど、でもわたしは勉強ができるから」「美人でモテるから」「仕事ができるから」……と、自分を納得させてそれぞれ勉強なり仕事なり恋なり、別の場所で活躍している自分が支えてくれたことでしょう。

 でも実際のわたしは勉強もダメ、運動もダメ、要領が悪い上に後ろ向きと来ています。
唯一得意と言えるのは文章を書くことだけで、それすらも一次選考落ちという事実に否定されるたび、世界中のすべてから「あなたは要りません」と言われたのも同然に感じていたのです。

 兄の励ましがなければ歩道橋から飛び降りていたかも知れません。
お兄ちゃん、ありがとう!

自分が間違っていることを認められない

 連続で一次落ちしていたくせに、わたしは自分の書き方はこれで間違っていないと思い上がり、駄作を量産していました。

 何度書き直しても根本的な部分を理解していない、学ぶ気もないから駄作のままだったんです。
なぜやり方が間違っていると認められなかったかと言うと、だってわたしの唯一得意なことは小説を書くことだから、それだけは自分自身では否定できなかったんです。
間違っているのは周りのほうだっていつも自分に言い聞かせていました。

 こうしていくら書いても誰にも認められず、いつの日か創作から遠ざかっていたわたしがたどり着いたのが、BLだったわけです。
このあたりの経緯は以前のコラムに書いたので省略しますが、好きな小説を好きなように書いたとき、わたしはやっと「誰かに認められたい」という脅迫観念から解放された気がしました。

自分のために書く

 どこかの出版社がわたしの小説を出版したいと申し込んでくる日は来ないし、映像化することなんか永遠にないでしょう。

 それでもわたしはこの先も書き続けます。
それはもちろん読んでくれる人のためでもあるけど、小説の中でならどんな恥も怒りもぶちまけることができるし、言いたいことを全力で言っているときのわたしはちょっとだけカッコイイと自分で思えるからなんです。











 ……ごめんなさいウソつきました。
本当は人気が欲しい! 小説家デビューしたいし印税が5000兆円くらい欲しいよおおお!
あばばばばー!!

 夢を持つ。夢を叶える。すばらしいことだが、それは自分の心のなかにモンスターを飼育するようなものではないだろうか。
生きることは戦いだ。自分が飼育しているモンスターとの。

――緒真坂『だって二十九といったら就職する年齢としては、ぎりぎりでしょう?』(『アナログガール』収録)より

(小膳)

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ほんの5000兆円でいいんです。