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フィクションヘルパー 第1話

フィクションヘルパー

これから連載する物語は、あくまでもフィクションである。
ある介護職が遭遇する、どこにでもあるかもしれない、場面場面である。
衝撃?現実?偶然?当然? 受け取り方は様々。
あくまでも、フィクションである。

第一話
駆け出し

31歳、子供1人の3人家族。
転職続きだったが、最後には本当の「ありがとう」を貰いながらの仕事で生きていければ、越したことはないと思い、介護職を選んだ。
だが、現実はだいぶ違った。
『ヘルパー募集!ヘルパー2級講習代金、会社が全額負担します!働きながら資格取得!』
その時の自分には、最高のフレーズだった。
早速面接に行った。
「ありがとう」を貰いながら仕事をしたい!
面接でも、もちろん、そう語った。
社長も、同志に会ったかのように、喜んでくれた。合格を貰った。
社長1人、社員俺1人の会社だった。
利用者も1人だけだった。
40代、頚椎損傷、四肢麻痺の利用者。
介護保険ではなく、当時の支援費利用者だった。
当時は、制度なんて全くわからない。
ただ、純粋に利用者のために仕事をするのが好きだった。
いや、喜んでくれる、ありがとうを言ってくれるのが嬉しかったんだ。
利用者は、まだ40代、若い。
映画にも、居酒屋にも一緒に行った。電車にも乗ってしょっちゅう出かけた。
変わり始めた晩が訪れた。
晩御飯も済ませた、夏の夜だった。
利用者の自宅は、公営マンションの一階。
そのマンションの一階は、4部屋全て障害者用に建てられ、頑丈な横にスライド型の扉だった。
その利用者に携わって、初めての夏だった。
その利用者宅での仕事は、ほぼほぼ夜勤。
しかも、日勤+夜勤の特殊型。
9時から16時 16時から22時まで休憩 22時から7時まで
つまり、合計16時間勤務
今考えれば、だいぶおかしい笑笑
話を戻す
夏の夜
ドーン・ドーンと頑丈な扉に鳴り響く
???最初はなんだかわからなかった
耳を澄ますと、何人かの声や笑い声その後にドーン
やっとわかった、ボールが扉に当たっている
利用者は言う、初めてじゃない、しょっちゅうだと
頭に来た!
外に出た、4人だった。
文句を言った。すいませーん。でもヘラヘラ。ダメだった許せなかった。
1人を捕まえて、利用者宅に引きずり入れた。土下座させ、謝らせた。
別に正義の味方になりたかったんじゃない。
その4人が、文句を言われない場所を使ってたセコさが気に入らなかった。
ただ、それだけだった。
そこで、終わってれば良かった。
びっくりした。
その日を境に、利用者が調子こきはじめちゃったのだ。
始めは、(当然の権利)から→(そこまで言う?)に段々変わっていった。
今になっても、よくわからない。
ただ、自分が居続けるのは、良くないとは分かった。
ほろ苦い、デビュー戦だった。


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