【ショートショート】分別できない人

分別できない人は、分別できないゴミ袋を抱えて、家を出た。どこかでゴミを捨てようと思った。なぜ、そうしたのかと言うと、彼は分別できない人だからである。
彼は公園に向かった。公園にゴミ箱が設置してあるのを見た気がしたから。しかし、公園にゴミ箱はなかった。撤去されていた。
街中を探して回ったけれど、ゴミ箱はどこにもなかった。駅。コンビニ。かつて当たり前にあった場所からゴミ箱が忽然と姿を消していた。彼は血眼になってゴミ箱を捜し続けた。向かいのホーム。路地裏の窓。そんなとこにあるはずもないのに。
彼は途方に暮れて、ゴミ袋を抱えて家に戻ってきた。ドアを開けた瞬間、これまで捨てきれなかった大量のゴミが雪崩れになって、崩れ落ちてきた。言いようのない異臭とともに。彼は哀しくなって泣いた。
どうか彼に「分別しよう」などと言わないでほしい。なぜなら最初に言ったように、彼は分別できない人なのだから。つけっぱなしのテレビは「SDGs持続可能な社会」とかなんとか言っていた。