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訪れた国

Episode 39 – India 6C
 
 ニューデリーを高い所から見ますと、市内に緑が多く恵まれています。中心部は計画的につくられた都市だけあって、道は広くよく整頓されていました。清掃も行き届いていて国際的な大都市の顔をしています。
市内とその周辺では車の渋滞とスラムのような街並みをたくさん経験しました。特に、2010年はインドで初めて開催されるコモンウェルス大会直前で、市内の混雑ぶりは激しかったように記憶しています。車の渋滞に加えて、高速道路や地下鉄の建設ラッシュで空が白く濁って見えて、市内の空気は霞がかかったようにどんどん悪くなっていきました。
 車が渋滞に捕まると、10分か15分で行けるところが、1時間以上かかることも珍しくありませんでした。毎回、面会の約束時間に遅れそうになってヒヤヒヤしたものです。信号待ちで車が止まったとき、新聞売りや花売りが寄ってきても無視していましたが、赤ん坊を抱えた物乞いの人に窓をたたかれて、知らない顔をするのは苦痛でもありました。
 インドで困るのは昼の食事です。国際的な街ならば普通、街中のどのレストランに入っても大体何でも食べられますが、インドの場合お店を選ばないと、ちょっと安心できないような雰囲気がありました。どこでも入ってしまえば、おそらく問題なく食べられましたが、勇気がいりました。
 マクドナルドはあるし、日本料理屋もありました。チャイニーズ・レストランはあまり見かけませんでした。そういえば、世界中の大都市には必ずある中華街はなかったような気がします。中華料理のテイクアウトはあって、よく利用しました。ナンの文化と麺の文化はあまり合わないのかもしれません。
 0を発見したインド人の文化は“リグ・ヴェーダ”と“ヒンズー教”を抜きにしては語れません。どちらも奥が深くて、インド文化の理解を困難にしています。ただ、ヒンズー教はなんでも受け入れるそうで、仏教は108番目だとか聞きました。
インド人は他の文化を理解しますが批評はしません。自分たちの文化はわかってほしいと思っているようですが、無理強いするわけではありません。だから、西と東が戦いを始めても、どちらの側にもつきません。“己所不欲、勿施於人”(おのれのほっせざるところ、ひとにほどこすことなかれ)という感じです。
 なぜか、彼らは日本のことをよく知っていますし、あのインド英語でよく接してくれます。彼らからヒロシマやナガサキのことを聞いたのは一度ではありません。ネール首相が日本の子供たちのために、上野動物園へ象を贈った話も聞きました。
 気になってちょっと調べてみると、東京裁判(極東国際軍事裁判)に行き当たりました。インドのパール判事は、平和に対する罪と人道に対する罪は事後法であるとして、事後法で裁くことはできないという解釈をしました。全員の無罪を主張する1,235ページに及ぶ反対意見書を発表したことがわかりました。
 2022年のインドの推定人口は14億1700万人で、中国の14億1200万人を抜いて世界一になったようです。インドのGDPは、イギリスを抜いて5位になりました。日本のGDPは、近々ドイツに抜かれて4位になる、という予想が出ています。成長著しいインドが日本を追い抜く日はそう遠くないかもしれません。


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