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組織運営の技術

組織運営の技術-電力供給
 
 8月24日次世代原発の開発・建設の検討を始めることが発表されました。福島の原発事故の跡片付けの先行きが見えない中で、新規の原発の検討を始めることは唐突に発表された感じがしました。運転期間の無期限延長制度の検討も進んでいます。
次世代型の原発といえども想定に基づく制御技術によって安全を確保しようとする本質に変わりありません。想定外の事象に対しても安全を確保する対処方法を確立することは不可能で、100パーセント安全が担保されるということはないのです。
しかも、次世代型の原発の検討を始めても、成果が出てくるのは10年、20年先のことですから、現在の夏と冬に電力供給が逼迫するという問題の解決にはなりません。
今年の夏は猛暑で、電力供給に黄色信号が灯りました。これから冬に向かって電力供給が逼迫するので、また節電の呼びかけがあるようです。なぜ電力供給が逼迫するのでしょうか。理由の一つは福島の原発事故のために原発の稼働が制限を受けていることでしょう。しかし、事故から10年以上たっても代替の発電設備が十分に準備されていないことにはもっと驚きます。
 原子力に頼らない持続可能な発電設備として風力発電が本格的に導入されつつあります。海上に設置する場合も地上に設置する場合も、周辺環境や景観への影響が少なからずあります。さらに、住民の生活や漁業や林業とのかね合いを考えると、巨大な風車の設置は簡単ではありません。
地上でも海上でも風力発電設備を建設するための環境評価、基地となる地域や港湾の整備が遅れているので、電源供給の主力になるにはまだ時間がかかりそうです。
 太陽光発電もたくさん行われていますが、太陽光発電の設備を設置するために大規模な開発が行われて、自然が破壊されたり景色を損なったりしています。また、設備を定期的に交換することも必要なので、設備のライフサイクルコストも無視できる状況ではありません。
福島の事故が発生したのは想定外の事象を想定していなかったところにあります。大きな津波が想定できたかできなかったではなく、想定外のことが発生した時にどうするかを検討しておくことが組織の運営では求められています。
知らなかったとか想定外だった、自然災害だから仕方がなかったというような言い訳をよく聞きますが、それで組織の運営者が責任を逃れることはできません。知らされていようがいまいが、想定外であろうがなかろうが、自然災害であろうがなかろうが責任者は責任から逃れることはできません。わたしたち人間も自然の一部として、想定外を想定するのが責任者の当然の務めだからです。
しかし、わたしたちの社会において責任の所在を確定することは非常にむつかしいのです。責任の所在を確定したからと言って問題が解決するわけではありませんが、多くの組織はポストの責任を明確にしていません。わたしたちの社会組織が各ポストの権威、義務と責任を具体的に明文化することが多くないのは、ポストに就いた方の責任を追及することはわたしたちの文化になじまないからです。
組織運営の規則としてポストの権威と義務と責任を明文化することは、問題が起きた時にポストの責任を追及することが目的ではありません。規則化が求めることは、ポストに就いた人がその権威をもって、その責任範囲において義務を果たすことです。
化石燃料の使用を抑えた持続可能な環境保護は先進国とは3周遅れ感があります。遅れを取り戻すための政策は拙速であってはなりません。遅れをもたらしている組織運営の実態を把握し、問題の本質を検証して社会全体で遅れを取り戻す努力を始めなければいけません。さもないと、遠からず先進国から脱落してしまいます。
 

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