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道路インフラの整備(Development of Road and Highways)

 鉄道が人や物のほかに情報や文化を運んだように、道路も生活を支えてきました。高速道路は物流を支え、国道は都市と都市を結んで、街道筋は地域を走っています。道路は生活に欠かせないインフラですから、道路の整備は私たちの安心と安全に応える必要があります。
一般の道路で改良が完了した道路の延長は約6割で、改良が必要な道路が4割あります。今後も整備が必要な一般道は少なくないのです。たとえば、通学路の安全確保や毎日の生活で使う道の歩道確保が課題です。消防車が入れないような路地が密集する地域の整備も進んでいません。地域と地域を結び多くの車が利用している昔からの街道筋には十分な歩道がありませんし、市街地の生活道路で歩道のない道も少なくありません。
一方、国道の改良は進んでおり、整備が完了している国道は全延長の9割を超えています。しかし、整備は完全には終わっていませんから、今も地方ではトンネルなどの建設は続いていますし、バイパスなどの建設が続いているのです。
一般道を整備するときに、自転車専用レーンが設置される道路は多くありません。自転車は原則として車道を走ることになっていますが、今では普通に自転車が歩道を走っています。1970年に法律で自転車が歩道を走ることが認められたからです。自転車レーンのない道路が多いので、自転車が歩道を走ることで交通事故を減らすことができました。しかし、最近は自転車の歩道走行マナーが劣化して事故が増えてきたようです。悪質な自転車運転を取り締まるために、道路交通法を改正して自転車に反則金制度(青切符)が導入されたそうです。
また、電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の利用条件が緩和(16歳以上は免許不要)されてから、街中をボードで走る若者が増えました。電動キックボードは原則として車道を走ることになっていますが、やむを得ず歩道を走るときは時速6km以下と規定されています。その他にも電動キックボードの利用にあたっては、いろいろの規則がありますが、運転免許が不要なのでルール無視が横行しています。電動モペットはペダルがあるので電動アシスト自転車のように見えますが、原動機付自転車扱いですから免許が必要です。
高速道路の整備状況を見ますと、たとえば、ドイツでは1921年に全長9kmの自動車専用道路が開通しています。1939年の第二次世界戦争の開戦までには3,860kmが完成していました。100年後の2021年には総延長約13,000kmが供用されています。
日本では、戦前に高速道路(弾丸道路と呼ばれていました)はありませんでした。最初の高速道路は1963年に開通した滋賀県の栗東と兵庫県の尼崎間(71.7km)を結ぶ名神高速道路です。
その後、1987年に第四次全国総合開発計画(四全総)で、全長14,000kmの高規格の幹線道路網の建設計画が決定されました。道路網建設計画の達成目標は2015年でしたが建設目標は達成できませんでした。計画より建設に長い時間がかかっているのは、日本は山の多い国土なので建設に想定以上の時間と費用がかかっているからです。2021年の供用総延長は約9,200kmで、現在も四全総の計画に基づいた高速道路の建設は続いています。
四全総は全国どこでも概ね1時間(約50km)走れば利用できる自動車専用道路施設を目標としています。ドイツの道路網計画は、どこでも約10km(約15分)走れば自動車専用道路を利用できることを目標としています。ヨーロッパの先進諸国では都市間の平均的な移動速度は約80km/hで、日本では60km/hです。
日本の本格的なインフラ整備は、明治時代に始まりました。現在はインフラ施設のメンテナンスが必要な時代になっていますが、今も社会資本の整備は続いています。インフラの新設が続いている理由は、明治政府が軍隊と産業の近代化を重点政策としたために、インフラの整備が後回しにされたからです。
明治政府にとっては、徳川幕府が諸外国と結んだ関税の自主権や治外法権などの不平等条約の改正交渉が喫緊の課題でした。欧米先進諸国と対等に交渉するためには、一日も早く一流国になる必要があったのです。明治政府は「富国強兵」と「殖産興業」をスローガンにあげて、早期に近代化して一流国になることを目指したのです。
明治政府は廃藩置県を断行して中央集権を確立しましたが、財政は逼迫して予算に余裕はありませんでした。軍隊と産業の近代化に必要な予算確保を優先しましたから、インフラ整備は帝都(東京)を中心に行うにとどめざるを得なかったのです。限られた予算では、地方のインフラ整備や文化振興や庶民の生活向上は二の次でした。道路などのインフラ整備が今も続いている理由は、明治政府が目標とした一流国をめざす近代化の重点政策にあったのです。
ヨーロッパにはローマ時代に造られた2,000年前の敷石道路が今も残っています。ヨーロッパの先進諸国と比べると、日本の舗装道路は建設し始めてからまだ200年もたっていません。日本の道路がまだ十分ではないのは当然です。
高速道路から身近な道路まで、道路は生活に欠かせない基礎的インフラです。道路は、人や物の移動だけではなく情報を運び文化を育てます。地方の生活文化を支えるために道路の整備は必要です。速さも大切ですが、安全はもっと重要です。通学路や買い物道などの整備は後回しにはできません。生活道路の整備は待ったなしです。
日本が先進国の仲間に留まり続けるためにも道路インフラの整備は欠かせません。日本が今抱えている課題を解決するためには、道路が結ぶ文化と人つくりですから、必要な予算を確保するために予算の組み換えを視野に入れて排除してはいけません。

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