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訪れた国

Episode 19 – Korea 1
 
歴史的に強いつながりのあるすぐ隣の国には2度しか行ったことがありません。一度はセミナーへの参加、もう一度は観光旅行です。
ソウルへ行って苦労するのは、ハングルで書かれた案内板が読めないことです。英語表記がある案内板も少なくないのですが、イランへ行ったときのアラビア文字と同じで読めないのです。観光客相手のところは日本語表記があって助かりました。しかし、地下鉄の駅はハングルと番号だけだったと思います。ですから、地下鉄で移動するときは、どこへ行くにも番号を頼りにしていました。
 宿泊したホテルは街はずれの丘の上にありましたので、繁華街から戻るときには地下鉄の終点からタクシーに乗ればいいと思っていました。明洞で夕食を取った後、地下鉄で終点まで行って降りると、辺りはうす暗く街はずれでなにもありません。もちろんタクシーはありません。仕方がないので歩道のない道を歩き始めました。
 歩きながらたまに通るタクシーに向かって手を挙げるのですが、止まるタクシーはありません。しばらく歩くと後ろから来たタクシーが止まってくれました。見ると若い男女が乗っています。運転手が英語で丘の上のホテルへ行く途中だけど相乗りするかと聞くので、英語で返事を返して乗せてもらいました。
 黙って助手席に座っていると、後ろの座席にいる若い男女の話し声が聞こえます。二人は日本から観光に来てホテルのカジノへ行くようです。運転手とのやり取りを英語で対応していたので、わたしを日本人とは思っていないようです。二人の話の内容から日本人であることを明かすのは避けた方がいいような雰囲気を感じたので、ホテルに到着するまで黙っていました。ホテルに到着して英語でお礼を言いながらタクシーを降りました。もう少し事情を探るためにカジノへ行ってみようかなとも思いましたが、まっすぐ部屋へ戻りました。今でも少し気になる出来事でした。
 韓国の一般の人たちが日本や日本文化に対して極端に悪い感情を持っているようには感じられませんでした。しかし、国と国との関係になると違うようです。一度結んだ約束事の理解も時間がたつと社会環境が変わるので、解釈に違いが出てくることがあるようです。元より理解そのものが同じではなかったのかもしれません。
時間と共に社会を取り巻く環境が変わることは当然のことで想定しうることです。一度結んだ約束でも見直しが必要になることはあるかもしれません。約束を結んだ相手が見直しを求めて問題を提起してくることは普通にあり得ることなのです。署名を交わした約束だからいまさら何を言うかという態度では解決になりません。なにが、なぜ、どのように変わってきたので再度話し合いたいという要望が出てくることは、約束を交わした時点で想定しうることで不当な要求ではないからです。
そのような時には対等の外交交渉をすることが唯一の解決方法となります。まず相手の言い分を聞いてみる必要があります。なにを、なぜ、どのように考えているのかなどの背景を聞いたうえで、相手がどのように思っているのかがわかれば回答は不可能ではありません。回答に対する相手の理解を聞いてみて、さらに返事をするという対話を繰り返して、お互いの解釈に違いがないことを確認していくことが交渉に求められているプロセスです。
お互いに署名した段階で課題は解決済みという硬直した解釈で、対話の門を閉ざして話し合いを避けてはいけません。先日亡くなられたゴルバチョフさんは対話と交渉こそが問題解決への唯一の道だと何度も言われていました。交渉力の大切さを改めて思い起こされました。

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