見出し画像

産業の衰退1(Declining Industry 1)

日本のGDPは昨年(2023年)にドイツに抜かれて4位になりました。今年(2024年)中にはインドに抜かれて5位になるようです。
日本の産業が衰退してきた大きな要因の一つは、次々と明らかになる製造業の不正行為にあるようです。製造業が10年以上の長きにわたって行ってきた不正行為は、試験データの改ざんやねつ造した書類による認証の取得です。
産業の衰退とともに日本の「後れ」が一般に実感されるようになってきて、先進国脱落の危機が感じられるようになりました。
製造業の「モノつくり」に携わる技術者は、モノを研究する中でより良くて便利なモノをつくって消費者に届けるために、ハードの技術の改善を重ねてきました。これまでの実績は実力で得たものではなく、不正のお陰で得てきたものだという疑惑は産業の衰退と無縁ではありません。
「モノつくり」のハードの技術はモノと対話してモノの品質の高さを誇ってきました。ハードの技術は設計時に設定する基準内に製品の品質を収めることを目的とする品質管理業務に支えられています。高い品質管理業務に支えられて、個別の製品の品質が保証されてきましたが、不正行為によって品質管理の信頼が揺らいでいるのです。
不正がなくても産業が衰退してきた例は、大手電機会社が国内での液晶パネルの生産を停止する報道にありました。
この大手電機会社は、液晶パネルを開発していち早く電卓に搭載し、文字盤を液晶表示にしたことで一躍トップに躍り出ました。2004年からは液晶テレビを一貫生産して、新設したカラー液晶の亀山工場は「亀山モデル」といわれて多いに売れました。
2009年から堺で大規模の液晶工場を操業していましたが、大型の液晶テレビは東アジアの企業との価格競争に巻き込まれてしまったのです。2011年からはスマートフォンの液晶画面の供給を始めますが、業績回復には至りませんでした。紆余曲折の末2016年に台湾の会社に買収されてしまいました。
かつて日本が半導体の製造で世界をリードしていた頃がありましたが、いまでは台湾の半導体メーカーが熊本に大規模工場を建設するようになりました。
半導体は何を製造するにしても欠かせない重要な部品です。日本製の半導体を生産し供給の自由度を確保しておくために5,900億円を融資して官民共同で新しい会社が設立されました。当面は総額9,200億円が投下されたようですが、試作ラインの稼働までにはさらに1兆円が必要になるといわれています。
これからも先進国の地位を守り続けるためには、製造業は日本の基幹産業ということで「モノつくり」に投資し続ける方針は不変のようです。確かに「モノつくり」のハードの技術に頼って最新技術を開発し必要なものを供給し続けることは大切です。
同時に「コトの営み」のソフトの技術を磨かなければ労働生産性は上がらず、いまの「後れ」を取り戻すことはできません。
「モノつくり」のハードの技術は品質管理という一つずつの製品の質の高さに支えられていますが「コトの営み」のソフトの技術は組織の運営品質を保証する手法です。個別の品質が管理されていたとしても、全体の品質が保証されないようでは、産業の衰退を止めて「後れ」は取り戻すことはできないことは明らかです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?