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【詩】水仙の女神

こんな身体では生きられないのだと嘆いては

自分を傷つけて 甘やかして 快楽に溺れる


こんな身体では耐えられないのだと叫んでは

傷口をさすり 舐め 自分を慰める


こんな人生は耐えられないのだと泣いて

こんな姿は自分ではないと喚いて


こんなはずじゃなかった こんなはずじゃなかったと

ぐちぐちと音を立てる己の腹に刃を刺す


椿の花を貪って

赤い吐瀉物を吐くと

水仙がこちらを見ていて

その水仙の瞳に魅入られて


あぁ、死んだら、緑の輝く場所に立つ、小さくて白い小屋で、水仙の目の女神様と一緒に住めるのだ、と思った


女神様は生きている私が嫌いで

死んだ私は愛してくれる


死んだら抱きしめてくれるのだ

優しく包みこんでくれるのだ


それだけで私は報われるから

どうか今死なせてほしい


水仙の花に魅入られて

私は小さな白い小屋のある

美しい緑の世界へ行った


光と緑で満たされた世界には少し浮くような

真っ白い四角い小屋があって

そこでずっと一緒に女神様と暮らせるのだ


水仙がこちらを見ている

私の本当の姿を暴こうとするように


女神様の目はとても綺麗で

ブロンドの髪が美しくて


私はその世界なら自分でいられると錯覚した


その緑の世界は長くはもたなくて

知らない男の神様がやってきて小屋を壊して


女神様は孕まされ

たくさんの目玉を産む


目玉がこちらを見ている


その目玉を食べた私の身体もボロボロと目玉を産む


美しい紫の世界の海の洞窟で

女神様を守っていたけれど

男の神様には見つかって

どうやっても生きられないねと言って

私と女神様は海に溶けた


珊瑚の卵が海に舞い

またたくさんの命が生まれる


そんな美しい光景を見て

また私はこの世に生まれた


早く咲いた水仙がこちらを見ていた

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