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今は遠い記憶の彼方

人生で初めて自動車を買った。日産の極めて平凡な中古のノートだ。それから1ヶ月、水を得た魚のようにドライブを繰り返し、すでに走行距離は3千キロに近づきつつある。クーラーボックスとマットレスを後部座席に詰め込んで、何度か車中泊で夜を過ごした。一人旅は自由で孤独で、心地よい。

この日曜日の夕方も、松本まで行った帰りに諏訪湖の周りをぐるっと一周した。18歳の頃よく聴いていた羊文学のアルバムを小さめの音量で響かせて、ミントのガムを噛みながら口ずさんだ。

青春時代が終われば
私たち、生きてる意味はないわ

ー羊文学『ドラマ』より

5年前の夏、この一節を聖歌のように繰り返し歌っていた塩塚モエカは今も笑顔で音楽活動をしているし、日記にこの歌詞を殴り書きして噛み締めていた僕だってのほほんと人生を楽しんでいる。感情は一過性だし、そのことに大きな意味はないんだけど、今日の僕にはやけに響いてしまった。悪いことではないんだけど、少し寂しくなった。

頭の中が変な風に煮詰まってしまったので、幹線道路沿いのスターバックスでチキンアラビアータのサンドイッチを食べながらnoteを書いている。この夏はたくさん文章を書きたいと思ったけど、気づけばもう8月だ。短い夏は終わり、僕のいちばん好きな季節が来る。楽しみだ。

青春時代は終わった。はるか昔に笑い合った人たちも、若く苦しみ続けた自分も、今は遠い記憶の彼方だ。

新しい時代をつくる気持ちにもなれないけれど、生きることをやめようとは思わない。たまに会える友達もいるし、車に乗ってどこまでも行ける自由を手に入れたからかもしれないけれど、形を変えて音楽を続けてくれる人たち、目的を変えて生きる自分がいることも大きいと思う。

今日はこれから歴史の本を読んで日記を書くつもりだ。世界の歴史と、自分の歴史。続きを始めなくては。

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