[一語一会の種 #11] Echo Chamber
Echo Chamber:
拙訳:ニュースメディアに関する議論の中で,エコーチャンバーとは,信条(のような考え方)が,閉鎖的な場の中でコミュニケーションと(その)繰り返しによって増幅または強化され,なおかつ非難から免れるような状況を指す.エコーチャンバーの中にいることによって,人々は自身がすでに持っている考え方を,補強するような情報を求めることができる.それに反対する見方と対峙することなく,である.そしてそういったことが,確証バイアス*を無意識的に示してしまうことにつながる.
*確証バイアス:自らの支持する考えを反証するようなエビデンスを集めない,傾向.認知心理学などより.
少しわかりにくいが,もう少し噛み砕くと,自分の思想・考えに反しない,符合するような考え・情報ばかりを取り入れてしまうことによって,そのもともと持っている思想の方にさらに近づいてしまう,という現象だ.
結果として,極端化が生じる場合も多いという.(敢えて二極化とは言わないが…).ポジティブフィードバックという制御(?)機構である.
まず,出力されたもの(アウトプット)の結果が,入力(インプット)に反映されるのがフィードバックである.
例えばそれがネガティブであると,アウトプットが増えてくるとそれを減らす方向に作用し,減ってくるとそれを増やす方向に作用するので,結果として必要な対応はでき,しかもそれが完了すれば動的に安定するというものである.
逆にポジティブであるときは,アウトプットが出てくるとどんどんそれを増幅していくため,最終的にはいわば暴走する状態になる.これがポジティブフィードバックである.
極端化する.ということである.
それが昨今では,アルゴリズムがこの問題を深めていると言われている.なぜなら,もしその人がその人の考え方に沿ったことばかりを検索し,クリック(ないしタップ)しているとしたら,レコメンデーション機能のようなアルゴリズムはさらにクリック率を上げる観点で,その傾向に似た情報(例えば動画や投稿など)ばかりを提示するようになるからである.
このアルゴリズムによる増幅はフィルターバブルでも同じこと(前に記事を書いているので気になった方は参照していただきたい)だ.しかし,エコーチャンバーは特に周りの人たち(リアルかバーチャルかは問わない)からの反響があるという点において,少し違う現象なのだと思う.つまり,本来的には,おそらく現代でなくても起こっていた現象だろう,ということだ.
例えば,支持団体,支持政党の集会など,特にそれが「宗教的」な熱狂をもって参加している人たちの集まりの場合には,それが伝染・増幅する形で,濃縮されていくことだろう.
もちろん,極端化することが悪いことばかりであるとは言わない.極端な人たち同士でもよい議論ができて,調和を目指すことができるのであれば.
しかし,自分とは考えの違う相手のことが受容できなくなると,自分が相手の主張の一部にでも妥協して何か飲み込まなければならないとなった時に,引くに引けずに暴力的な手段に解決をゆだねてしまうことも,少なからず起こるのではないだろうか.
気を付けたいと思うし(かといってちょっと試してみたがアルゴリズムに逆らうのは難しそうな面があるのも感じる),気を付けてもらえるように,今後の発信においても注意していきたいと個人的に思っているところである.
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