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沼地に住む女


「明日、来ない?」

このラインが来たらセックスをする合図だった。

とてもとても大好きだった人だった。
私とは付き合ってくれなかったけど。

でも他の女と仲は良くても私のことは手放そうとしない、とても強欲な男だった。

その男は、顔も良く性格も明るくちょっと強引でいわゆる女にもてるタイプだった。


まだ経験も浅く、肉艇的にも精神的にもその男に私はすっかりはまってしまった。

もうこれ以上はまってはいけないと少し置くときに限ってくるお誘いの連絡。
この連絡を断れるほど私の心は強くなくダメだなと思いながらズルズルとまた深くはまっていった。


そんな男の家に今日も向かった。

待ち合わせをして、軽くご飯を食べて家に向かう。

タクシーで運転席から見えないように触れ合うこの時間が1番好きだった。
いつもは他の女と会っているんじゃないかと思い眠れずに過ごしていた夜も、この時だけは心穏やかだった。

その日は久しぶりに家に行った気がする。
とても暑い日だった。

いつもはシャワーを浴びてから行為がスタートしていた。
今日は汗ばんでいるなと感じた私は家に着いたらまずシャワーを借りようと思った。


家に上がり部屋につくと男は荷物を下ろしベッドに寝っ転がった。

私も荷物を降ろした瞬間に落ち着いてしまい、なんとなしにベッドの端に腰を下ろした。

ああそうだ、シャワーを借りるんだったと思い出した時だった。

「・・・ちょっともう我慢できない。」

ベッドの端に座る私を後ろから抱き着くようにキスをされた。


衝撃だった。
今日こそ私は報われるのかもと嬉しくてしょうがなかった。

まだクーラーをつけて間もなく、ほんのり生ぬるい部屋でお互いに貪りあうように体を求めた。


この嬉しい思い出が、この嬉しい出来事がまた起こるのではないかと信じる。

一瞬の喜びのためにまた私は日々の辛さを選んでしまうのだった。


体を重ねるたびに、今回は、次回こそは彼女になれるかなと思っていたけど最終的には別の女と付き合った。
あとから分かったのは、その間にも別の女と付き合ってたらしい。

男なんて所詮そんなものでしかないが、この思い出とあなたに感謝を。

これでアホほど酒を飲みます。