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鍼灸治療の真髄は「霊体」の治療に有り

身体に点在するツボに鍼や灸で刺激して、様々な症状を緩和する鍼灸治療というものがある。近年では、科学の進歩や、研究が進んでいることもあり、鍼灸治療がなぜ効くのかということが少しずつ分かってきている。が、解明はされていない。それはなぜか。

鍼灸治療について書かれてある、最古の書物の一つに「霊枢」という古典がある。もう一つ「素問」という古典があるのだが、こちらは東洋医学に関する概要が書かれている。この二つの書物が、鍼灸治療の基盤となっているわけだが、鍼灸を学ぶ学生も、教える立場の先生でさえも、この古典に目を通している人は少ない。目を通していたとしても、理解する人はもっと少ない。

基盤を知らずに、筋肉や骨の隙間に向かって鍼を打つのは、東洋医学とは言えるのだろうか。思うに、それは、東洋医学風の西洋医学だ。

鍼灸治療とは、「霊枢」という題名から分かる通り、「霊」すなわち肉体ではなく霊体を「枢」軸として治療する、というものである。つまり鍼灸治療とは、古代中国で完成された科学的体系の集大成なのである。現代科学を信仰する頭でいくら考えても、霊枢は理解することができない。

見えない身体の治療

古代中国人はわれわれが見知っている肉体とは別に、もうひとつ、目には見えない身体を観念したという。そこには気(エネルギー)の流れがあり、無数の霊穴(ツボ)が点在し、躍動し、それらこそが身体の本源とされた。だから、病はまず不可視の要所に現れ、医術は霊的身体に向けてほどこされた。

霊的身体は、古代中国における道教の思想であり、そこには、内臓器官を超越した心的器官の観念が介在している。

それは一見して四層からなる。

最上層には、死を超越した仙界(精神世界)がある。

第二層には、白髪、長い眉の老子(道教の始祖の一人)が座っており、任脈と督脈という経絡(ツボの流れ)に包まれ、人間の頭部を思わせる。任脈と督脈は、十ニ経絡全ての始まりであり、最も重要な経絡。

第三層は、心・肝・胆・腎など、いわば臓腑の世界である。

第四層は、それらの基層で、鉄牛が田を耕す。この田とは、丹田(臍の下にある気を練るところ)を指す。そこから最上層まで太い柱(脊柱)が貫いており、生命エネルギーの循環を表現している。

鍼灸治療は、生身の肉体を透かし、上記のような霊体を想念し、どのように刺激すれば気のめぐりが良くなるかと考え、施術を行うものである。

だから、巷に売られているツボの本に書かれているようなツボの位置に生きたツボはなく、より正確にツボを刺激したいのであれば、目を閉じ、自然と指を当てることだ。その指が当たっているところが、無意識的(つまり霊的)に自身の身体が刺激を求めているところ、となる。

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