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ウィルス性肺炎の治療を困難にしている理由

一般的な肺炎は細菌性によるものが多いですが、今回の新型コロナ感染症状の一つの肺炎はウィルス性のものです。そしてその抗ウィルス薬で承認されたものはレムデシビル(注射剤)だけです。

ウィルス性肺炎の治療が難しいのは特効的な抗ウィルス薬がないだけではなく ウィルスの特性もあるのではないかと思います。

ウィルスが細菌と異なる最も大きな特徴は、ウィルス単独では増殖できないということです。すなわち 人や動物の体内に入り、細胞に侵入して(感染)細胞の機能を利用して(寄生)自分の複製を作り増やしていきます。

細菌の場合は、体内に入っても細胞に侵入することなく自身の機能を使って増やすことができるのです。

なので、体内でウィルスが増えるということは体内の細胞がウィルスで感染されていくことになり、体の免疫が働くということは、ウィルスだけでなく感染された自身の細胞をも破壊することになることになるのです。そして免疫が過剰になった場合 サイトカインストームの状態になり感染してない細胞まで破壊することになり重症化することになります。

これは肺炎が細菌によるものかウィルスによるものかで肺炎の状態が異なることにもつながります。

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上の図でみると、異物が鼻や口から入ってきて気管支も通り肺胞まで到達してしまったとき、細菌性の場合は左図の示す通り肺胞の細胞表面上で増殖することで免疫が働き肺胞腔内で炎症が起きます。一方ウィルス性の場合、右図になりますが細胞内に入り込み肺細胞自体に または肺細胞と血管の間で炎症が起きてしまいます。

肺炎で出る症状も異なり、細菌性の場合、肺胞内で免疫反応がおき その結果膿が生じて痰が絡んだら咳が出ますが、ウィルス性の場合 空咳です。そして症状が進むと肺細胞が繊維化して酸素 二酸化炭素のガス交換が難しくなり息切れ 息苦しさが現れることになります。

治療を考えるとき、細菌性の場合は抗生剤 ウィルス性の場合は抗ウィルス剤を使います。抗生剤は細菌は細胞と構造が異なるため、その相違点に作用することで抗菌作用現れます。耐性などの問題なければ比較的効果は出やすいようです。一方抗ウィルス剤の場合 ウィルスの構造は細菌のような標的になるような特徴のある構造ではありません。また正常細胞に感染して細胞内で増殖します。増殖を抑えようとする時ウィルスだけ効いて正常細胞には作用しない薬でなければ副作用が出てしまいます。今回のような新しいウィルスに対しての薬の開発はそういう側面でも難しい部分があるのかもしれません。

また抗生剤は複数の菌種に対して有効性を示すが、抗ウィルス剤はウィルスの形質の多様性のためか各ウイルスに対して各治療薬が存在します。

現在 アビガンは承認目指して新型コロナ感染陽性者の無症状 軽症者対象に臨床試験中です。入院治療中でアビガン投与で改善された症例の報告はあるようですが、無症状 軽症者対象の臨床試験ではまだ有効性は示されていないようです。(臨床試験の概要は新型コロナウィルスPCR陽性の無症状 軽症患者を対象にしてアビガンを服用した群と服用しなかった群で6日後のウィルス消失率を比較する)

承認されたレムデシビルは注射剤なので治療の対象は入院治療が必要な中〜重症者が対象となるでしょう。

新型コロナウィルスに感染しても8割は軽症か無症状のまま自然治癒するとされています。個人的にはインフルエンザ陽性患者に機械的に抗インフルエンザ薬が処方されるように、PCR陽性判明者全てが抗ウィルス剤を服用するという流れになるのは賛成しかねるところではあります。


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