どさくさに紛れ込ませ
4年ほど前、お世話になったムンバイ支店(仮名)の先輩が退職される際、送別会を盛大にしようということで、幹事団が起ち上がった。
リーダーは、おにぎりさん(仮名、男性)。
そして、脇を固めるのがクルクルさん(仮名、女性)と、わたし久瀬(仮名)だ。
わたしたちは以前ムンバイ支店で一緒に働いていた。
転勤で散り散りになった今でも交流が続いている。
「サンキューの会」と銘打った送別会には総勢20名ほどが集まることになった。
メンバーと日程が決まれば、次は場所選びだ。
おにぎりさん、クルクルさん、久瀬の3人のグループLINEで、着々と話が進んでいく。
それぞれグルメサイトを使い、お店を探す。
「〇〇駅 徒歩10分以内」(検索)
「20名 貸切 飲み放題」(検索)
「プロジェクター付 音響設備あり」(検索)
ちょうど良さそうな店がありそうでない。
条件に合うお店を見つけても、すでに予約で埋まっていたりする。
そんな中、おにぎりさんが手際よく条件にピッタリ合うお店を探して予約してくれた。
お祝いのケーキも出してくれるとのこと。
わたしがモタモタしている間に、おにぎりさんはサクサク仕事を進めてくれる。
早速クルクルさんは週末に画用紙やリボンなど材料を調達し、飾りを作ってくれた。
おしゃれなガーランド風の飾りに、主役の方のお名前と感謝のメッセージも書かれたもので、とてもかわいい。
クルクルさんも、サクサク仕事を進めてくれる。
サプライズで旦那さんからの感謝のお手紙を披露することになった。
我々の意思疎通はどんどんスムーズになる。
「ガワ」というだけで封筒のことだと分かり合える。
普段働く職場がバラバラの我々は、週1ペースで集まり、進捗状況を報告し合った。
と言っても、打ち合わせはせいぜい豚平焼きが届くまでの間ぐらいで、その後はただ3人で飲みに飲む。
おにぎりさんは打ち合わせと称して、どさくさに紛れて、ただ3人で飲みたいだけだ。
そして、クルクルさんとわたしも「打ち合わせだ、打ち合わせだ」と鼻息荒く、毎週のようにまんまと招集される。
サンキューの会を盛大にしようとするほど、タスクは増える。
平日仕事を終えた後に、グループLINEで連絡を取り合い、準備を進めていく。
似顔絵入りのメッセージポエムを業者に発注することになった。
素材となる写真がたくさんあった方が、精度の高い似顔絵が仕上がるらしく、それぞれの写真フォルダから、過去の写真を探していく。
2人とも仕事が早い。
次々と色んな写真が送られてくる。
わたしも一足遅れて写真を提出した。
テキパキ働く2人の足枷にならないように、わたしももっと頑張らなければ。
会を企画する中で、目上の方に少し無理を言って頼みたいことがあったので、おにぎりさんが連絡してくれた。
二人とも仕事が早い。
次々に色んな種類の菩薩像が送られてくる。
わたしも一足遅れて画像を提出した。
そうだ、こなすべきタスクが山積みだ。
無駄なことをしている時間はない。
おにぎりリーダーのもと、サンキューの会を成功させるという使命がある。
「菩薩 側面」(検索)
「観音菩薩 高級感」(検索)
「菩薩 シリーズ」(検索)
やはり、この中にストッパー役はいない。
どさくさに紛れて、観音菩薩の送別会を今後することがあっても十分対応できるほどの素材が集まった。
それぞれ準備を進めながら、進捗状況の確認のため、引き続き週1ペースで集まって打ち合わせを行う。
しかし、次第に3人のスケジュールが合わせづらくなってくる。
年度末の3月はただでさえ業務多忙で、加えて人事異動に伴う担当替えや引き継ぎ、各職場や取引先との送別会なども立て続けに行われる。
日付が変わる少し前にようやく居酒屋で3人集まり、タイムスケジュールや会場の確認事項、当日の準備の段取りを打ち合わせた。
さすがにお疲れの様子のおにぎりさんとクルクルさん。
明日が休みでよかった。
おにぎり「あーー疲れたーーー!新喜劇でも観て爆笑したいなーー!!」
クルクル「行きたい行きたい!吉本行きたい!」
テキパキ働く2人の足枷にならないように、わたしももっと頑張らなければ。
年度末、我々は多忙を極めている。
スケジュール調整は早め早めが肝心だ。
久瀬「わたし、よしもとのプレミア会員なんでチケット取れます。明日の15:45開演で、漫才はやすともさん。新喜劇は川畑座長です。辻本茂雄さんも出られます」
おにぎり「よし、打ち合わせは明日、吉本新喜劇で」
我々を止める者は誰もいない。
笑いの殿堂・なんばグランド花月で行われた打ち合わせは、海原ともこさんの「よろしこ!」、島田珠代さんの「男なんてシャボン玉〜」といった発言によって、実りの多いものとなった。
そして、白熱したやり取りの最後にはMr.オクレさんが登場し、打ち合わせをまとめてくれた。
どさくさに紛れ込ませて、吉本新喜劇を観に行ってしまう我々幹事団。
我々が取り仕切ったサンキューの会は、コテコテな送別会になった気がする。
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さて、次回の #クセスゴエッセイ は
「父・母・私 それぞれの料理スタンス」
をお届けします
お楽しみに〜
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