白雪レイドという個人VがAPEX配信で同接3万弱を叩き出すというパラダイムシフト

●個人勢異例の同接とBIG族

2021/3/1、白雪レイドという個人勢VTuberがAPEX LEGENDSのランクマッチでマスターに行く、という趣旨の配信で無事目標を達成した

それだけ書くと「ただ個人Vが高ランクに到達しただけ」という、珍しくはあれど奇跡というにはほど遠い出来事である。ただ驚くべきことに、この配信は最大同接約28000を叩き出した。YouTubeの人気APEX配信者でも通常なら1万程度であることを考えると、このところの同接が千〜数千な白雪レイドにとってはかなり多いと言えるのではないか?

この配信の同接が多かったのにはいくつかの背景がある。まずこの配信は“BIG★STAR”というVTuber3人組でマスターに行こう、という企画として一昨日から三日連続で行われていた

このチームは日頃から仲のいいメンツで、普段から頻繁にコラボしたり、お互いの配信でもよく話題として上げており、今年1月に行われた『VTuber最協決定戦 .ver APEX SEASON2』にも参加して、そのずば抜けたファイトスキルから優勝候補の一角としても名を挙げられたりした

少し前世の話になって申し訳ないが、このBIG★STARというチームは元を辿ると劇団ぽちという以前あったコラボグループであり、そのうちの1人である幼龍埜ゆいが当時の所属事務所であるVGamingの解散にともなって事実上Vを引退。そこでメンバーである叶、白雪レイド、一ノ瀬うるは達の「劇団ぽちとしての繋がり」はここで解消されてしまった

しかしその後、彼女は774inc.のブイアパから小森めととして“恐らく”再デビュー(無論、公式から前世についての言及は何一つされていないのであくまでも“予想の範疇”ではあるが)

ほどなくしてかつて劇団ぽちの一員であった白雪レイド、一ノ瀬うるはが小森めととコラボをはじめ、すぐに以前のような深い交流を持つようになり、先述のVTuber最協決定戦をキッカケにBIG★STARというチーム名が誕生することとなる

↑コーチ陣も名前にBIGSTARの文字を付けはじめたため、リスナー達からBIG族と呼ばれるようになった一同

最協決定戦では当初から優勝候補と言われていたこともあったうえ、大会ルールの都合で恐らく次回大会は同チームで組めないだろう(※1)ということもあって3人とも全力で練習に取り組んでいたのも記憶に新しい。結果的には優勝を逃したが、間違いなく最協決定戦を盛り上げたチームの一つだろう

※1 最協決定戦では特定のチームが強くなりすぎないよう、各参加者に最高到達ランクに対応するポイントが付与され、その合計がチームで一定数を越えないように調整しなければならないが、BIG★STARは全員がランク高めということもあって合算ギリギリだった

↑大会終了後、悔しさを滲ませる白雪レイド。「BIG★STARで挑むのはこれが最後のつもり」とこの切り抜きでも言っているように、以前からこのチームでマスターに行くということは決めていたらしい。もちろん誰か1人でもマスターに行くということは、最協決定戦にはポイント超過で出られなくなることを意味する

こうした“エモ”要素と、コーチ陣含めた普段のハプニングだらけなバカ配信とのギャップも相まって、BIG★STARこの数ヶ月で特に注目度が高いコラボグループとして人気を博し、またその文脈を引き継いだ白雪レイドのマスター到達配信も同接3万弱という数字となって表れたのだろう

●白雪レイド激動の一年

個人的には白雪レイドという個人Vがここまで短期間に注目を集めることになるとは思っても見なかった。というのも自分はVのFPS配信を広く浅く見ていたため、2018年から彼の存在も認知して度々配信も見に行っていたのだが、当時の彼は基本的に同接数百でPUBGを配信する、良くも悪くもよくいる個人Vの1人だったのだ

当時は渋谷ハルですらも通常配信で同接千人行けばかなり多い方という世界であり、V配信の視聴者数そのものがまだ少なかったこともあって閉じコン的側面は強かった

ただAPEXのブームとその流れに乗っかった渋谷ハルの影響力もあって状況は少しづつ傾いていき、2020年夏に開催された『RAGE×Legion Doujou Cup』という大規模コミュニティ大会で渋谷ハル、白雪レイド、一ノ瀬うるはのチームVTuberが優勝したことを皮切りに最協決定戦.ver APEX SEASON1CR cupと怒涛の大会ラッシュで一気に界隈外へもVTuber文化が浸透し、白雪レイドの存在も広く知られることとなった。その注目度の変貌ぶりは彼のYouTubeチャンネルの配信アーカイブから再生数を見れば一目瞭然だろう

画像1

↑RAGE×Legionの練習配信でもこの再生数だが、大会以後は1万回いくことも珍しくなくなっていく。シンデレラならぬ白雪姫街道とでも言うべきか

恐らく一年前の自分に「白雪レイドがマスター到達配信で同接3万弱叩き出すよ」と言っても一度では信じないだろう。それほどまでに白雪レイドというVTuberはこの一年で劇的に伸びたのだ

●実はチラホラ増えだした個人勢の伸び

ただV界隈広く浅く見てきた自分からすると、これを白雪レイドだけのパラダイムシフトとして片付けたくはない。この一年、いくつか個人Vとして登録者数を伸ばしてきた人をチラホラと見るようになってきているからだ

まずその筆頭としての渋谷ハルは、そもそも彼自身が活動内容とその伸び方について語っているので割愛する

その他にもAPEX界隈で伸びた事例でいうと、最協決定戦SEASON1で優勝した東京スカルタウンパカエルが代表例だろうか

女声が出せる男性Vということで、VCドッキリを仕掛けたりするなど、精力的に動画を投稿し続け、最協決定戦S2でもあっとぱわふるの一員として優勝候補に上がっていたりもした。特別目立ったバズり方をしているというわけではないが、個人勢という基準で見れば明らかに伸びているVTuberのうちの1人だろう


APEX外で特に自分がよく見ているVTuberでは歌衣メイカがいる。もともと大手Vとも古くから繋がりがあり、界隈での知名度は高かったものの、活動の主体を“女性の歌衣メイカ”から“男性の歌衣メイカ”に移した(※2)ことで当初は登録者が減少するなどの憂き目にも合ってしまった(雑談で本人が公表している)

※2 女性の歌衣メイカと男性の歌衣メイカは厳密には同名の別人であり、現在は女性の方がプロデューサーとして、男性の方が配信など表立った実活動の大半を担っている形

が、それでもめげずに自慢の歌ってみたの他にもデュエル・マスターズプレイス雀魂の動画を毎日投稿、それが少しづつ“資産”となり「一つの動画を見た後にオススメから他の動画を見てもらう」というサイクルを形成し、少しづつ登録者を増やして現在は19万人と大台一歩手前まできている

特に雀魂の3麻でひたすら高打点を狙うという企画『漢気雀魂』がキラーコンテンツとなっており、VTuberの始祖たるキズナアイも参加したことがあるなど、今や彼の代名詞といって差し支えないだろう


このところV界隈問わずブームとなっている人狼系ゲーム『Among Us』でも、VTuberとして活動していた先端恐怖症が様々な界隈をゴチャ混ぜにミックスしたコラボを度々やっているのだが、その中でV界隈側の知人として参加していたアベレージアモアス勢として伸びるという現象も起きている

先端恐怖症村は毎回ユニークなメンツが揃うため、こういう特殊な知られ方はそれまでVTuberの世界にはあまりなかった事例で、長らくVファンをやっている身としても面白い


他に自分が知っている中での特徴的なブレイクといえば伊集院ゼロがいる

もとは全く別の企画から彼の名前を知ったのだが、いつの間にやら『原神』の検証系動画勢として再生数を一気に伸ばしており、公式のコンテンツクリエイターにも選ばれたりしている

レオン・ゼロミヤがVTuberの動画を見るという『V VIDEO NiGHT』という企画配信で「何らかの専門的な知識をハウツーする動画でVTuberファン以外の層にウケて伸びてる個人Vがけっこういる」と言っていたのだが、伊集院ゼロもこの例の1人と言えるだろう。今後もこういった類の伸び方をするVTuberは増えるのではないかと個人的に思っている


もしかしたら明日にも意外なところからブレイクの兆しが見えてくるのかもしれないと思うと、浅瀬チャプチャプ勢としては楽しみな限りである

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