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ベトナムのマスク、褒められて、褒められて

長女がベトナムからお土産に買って来たマスク。最初は付けるのが恥ずかしかったが、思い切って、美容院に行くとき、付けた。

若い女性美容師さんが、目を丸くして「それ、手作りですか」

「いえ、ベトナム土産なんです」

「わー、素敵~」

褒められたのに気を良くして、郵便局に行くときにも付けた。顔見知りだからちょっと気恥ずかしいけど。

若い女性局員が受付のカウンター越しに、椅子に座っている私に「ハセガワさーん、それ、手作りですか」

「いえ、ベトナム土産なんです」

「わー。かっこいい。最近、手作りのマスクつけてくる人よく見かけるんですけど、ハセガワさんのがいちばんかっこいい~」

かっこいい、なんて褒められたこと、あったっけ?今までの人生で。チョー、嬉しい!

それでも、さすがに病院に付けて行くのは気が引けた。病院に行くときは白いスタンダードな大人しいマスクのほうがいいか?

でも、せっかくあちこちで褒められたんだ。病院で目立って何が悪い。病院だからと言って、大人しい、目立たない、控えめなマスクでなきゃいけない、なんて法律はないよ。

付けていこう!

外科外来待合室の長椅子に座ろうとしたら、座っていた中年の女性が私を見上げて、マスクに隠れた顔の上半分で、ニコニコ笑っている。

知り合いかな。私も、マスクの上半分で思い切り笑みを見せて「あ、お久しぶりです」と。

彼女は「ねえ、それ、手作りなの?」「いえ、ベトナム土産です」(知らない人だった!)

「すごーく素敵。ねえ、ねえ、お母さん、この人のマスク見て、綺麗ね。外国のだって」

横の車いすに座っている年取った女性に話しかける。車いすの人が患者で、彼女の母親なのだろう。

「ほんとうに綺麗だねえ。こんなの欲しいよ」年取った女性は、禿げた頭を振って私を見上げる。

病院にはちょっと場違いなマスクだが、誰も咎めだてしない。よかった~。

それから待つこと2時間、ようやく診察室に。主治医は青いマスクをしていた。傍で見ると、かなり毛羽立っている。きっと、何回も洗濯したんだ。

先生は、私のマスク変に思うかな。しかし主治医はいつもと変わらず朗らかにいろいろ説明。マスクなんか眼中にないようだ。

それはそうだよね、医師は病気のことで頭がいっぱいなんだから。

「この薬、毛が抜けますか」「いえ、ほとんど抜けません。少し薄くなる人もいますが、まず抜けないでしょう」

嬉しい~。髪の毛、私の頭にとどまってくれるんだ。

医師がものすごく大きな字で書いてくれた薬の飲み方のメモを手に外へ。

それから待つこと30分ほど。若い女性の看護師さんが、私の受付番号を呼び、小走りに近づいてきた。

彼女は、私に近づくなり目を丸くして「それ、手作り?」「いえ、ベトナム土産なんです」「素敵~かっこいいですねえ~」

で、私は、マスクを褒められまくってこの日の診察を終えた。

最後に病院の近くの薬局に。

今まで飲んだことのない「抗癌剤の薬」。どさりと渡されると怖くなった。副作用の説明をされるともっと怖くなった。

「心配することないですよ。何かあったらお電話ください」

薬剤師さんは、まるで普通の風邪薬の説明のように淡々と説明。ちょっと気が楽になった。

最後に私の顔をじっと見て「そのマスク、自分で作ったんですか」「いえ。ベトナム土産です」「素敵ですね」

最後の最後まで褒められて、気分良く家路についた。

あれから4日目、副作用は全く出ない。手足も痺れない。倦怠感も食欲不振も眩暈もない。

以前より、お肌の調子が良い。便通も良い。なんで?

これなら点滴治療も楽に乗り越えられるかな。

エキゾチックな目立つマスクは私の心にも元気をもたらしてくれたみたい。

私のイチオシのお守りにしよう!

『豚もおだてりゃ木に登る』という諺の見本のような私。このおめでたさとお守りで半年の治療を乗り越えます!

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