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周藤さんの絵   醍醐芳晴

この度は画集刊行おめでとうございます。
周藤さんとの出会いは、平成十五年、私が絵画グループ「品川みづゑ会」の講師として招かれた時でした。「みづゑ会」では、毎回厳しいまなざしとともに、泰然と絵を描いておられ、休憩時間となると、いつも温かい笑顔で話しかけてくださいました。
 
絵画は、色彩派と形態派に分けられると言われています。つまり、色の美しさやハーモニーにこだわるか、物の形や明暗対比にこだわるかということです。周藤さんの絵は、どちらかといえば形態派に入ると思われます。
がっちりとした人物デッサンや、背景とモチーフ色の明暗差を大きく捉える描画スタイルにそれが表れています。得意とする背景の一部を暗くする方法は、画面を単純化し静物、人物及び風景などの主題を明確に際立たせる効果があります。
しかし、過日の区民ギャラリーにおける個展では、形態派としての周藤さんの特徴を改めて実感すると同時に、色彩においても、特にその発色の強さが印象に残りました。
透明水彩は、絵具を水で溶いて色を希釈し、白い画用紙にのせる画法ですが、絵具の成分の粒子が不透明絵具と比べて粗く、光を透過しやすいので、どうしても色が淡く見えてしまいます。
周藤さんの描く「物」の固有色は、透明水彩特有の色の弱さがありません。それは、絵具をたっぷり筆に含ませ、紙に塗りつける大胆な技法で初めて可能となります。
それにしても、ここまで周藤さんの絵のカラープリントを何点か見ながらこの文を書いてきて、はっきり気づいたことがあります。静物画や人物画、風景画の持つ何とも言えない暖かい雰囲気に。
絵には一筆一筆、作者が過ごしてきた「時間」や「想い」などが定着されます。その筆触の温かさが周藤さんの絵の最大の魅力なのではないかと思います。周藤さんは今年九十六歳になられるそうです。いつまで もお元気で、我々の励みとなるような作品を制作されることをお祈りしております。
 



 

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