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語る者よ、語りつづけよ

私の世代の人間が次々にこの世から立ち去っていく。
その立ち去り方が、だれもが転覆されたまま、
敗北の白旗を掲げて消え去っていくようにみえるのだ。
このまま私たちは立ち去っていいのだろうか。
私たちは世界を転覆するために生きてきたのではなかったのか。

そうであるならば、やはり私たちの去り方は
《さよならのかわりに/君よ、永遠の嘘をついてくれ》ではないのか。
数人の人に送付するこの小さな雑誌「三百年かけて世界を転覆する日記」は、永遠の嘘をつく雑誌である。
そしてこの雑誌の読者もまた
《さよならのかわりに/君よ、永遠の嘘をついてくれ》という思想をもった人々である。

三十年前、やはり小さな雑誌「草の葉」を創刊させたが、その雑誌に魂を吹き込むためにホイットマンの詩を載せた。なにやらその詩は「永遠の嘘をついてくれ」を裏打ちしているようだ。

アメリカの言葉、しかし今を生きる私たちの言葉。いよいよ魂の底に痛切にしみ込んでくる。
 
Say on, sayers! Sing on, singers!
Delve! mould! pile the words of the earth!
Work on, age after age, nothing is to be lost,
It may have to wait long, but it will certainly come in use,
When the material are all prepared and ready, the
architects shall appear.
 
I swear to you the architects shall appear without fail,
I swear to you they will understand you and justify you,
The greatest among them shall be he who best knows you,
and encloses all and is faithful to all,
He and the rest shall not forget you, they shall perceive,
that you are not an iota less than they,
You shall be fully glorified in them.
(A song of the rolling earth)
 
語る者よ、語りつづけよ、歌う者よ、歌いつづけよ、
土を掘り、土をこね、地球の言葉を積み上げよ、
働きつづけよ、時代から時代へ、何ひとつ失うことは許されぬ、
待機の時間はおそらく長いが、しかしいつかはきっと陽の目を見る、
材料が全部そろって準備ができれば、建築家たちが現われてくる。
 
誓ってもいい、建築家たちは間違いなく現われる、
誓ってもいい、彼らはきっと君を理解し、君の正しさを認めてくれる、
彼らのなかでもっとも偉大な者となるのは、
君を一番よく知っていて、万物を包み、万物に忠実な者、
その彼と他の建築家たちとが、君を忘れず、
君が寸分たりとも彼らに劣らぬことを認めてくれる、
彼らによって君はくまなく賛えられる。
(回転する地球の歌 鍋島・酒本訳 「草の葉」岩波文庫)

 
 

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