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なぜ日本の高校生たちが、アメリカを征服することができたのか



 それは2018年の1月1日のことだ。アメリカの西海岸、カリフォニア州のパサデナという地で、おそらく世界最大であろうパレードが華やかに行われた。沿道は百万近い大群衆で埋まり、全米にテレビ中継され、何千万の人々が視聴する一大イベントだ。さまざまに装飾された二、三十メートルもの長大なフロート車をはさんで、全米から選抜された二十近いハイスクールのマーチングバンドが行進する。その光景をみるとき、アメリカの底力というものを感じないわけにはいかない。行進する高校生のバンドといったら、二百人とか三百人といった規模で、なかには五百人近い大編成で行進していくハイスクールもある。マーチングバンドだから、全員が楽器を手にしている。トランペットを、ホルンを、フルートを、クラリネットを、チューバを、バスーンを、トロンボーンを、そしてドラムがあり、キーボートもある。楽器はいずも高価だ。なにやらアメリカのパワーが楽器を吹奏しながら行進していくかのような光景だ。

 そんななか京都の橘高校のバンドが行進していった。アメリカの高校生たちのマーチングは、がっしりと整列を組んで軍隊式に行進していくのだが、この日本から参加した高校生のマーチングはアメリカ人の度肝を抜くのだ。彼女たちはダンスをしながら吹奏して行進していくのだ。しかも彼女たちが吹奏するのは、アメリ人の大好きな「スイング、スイング、スイング」であり、「スターウォーズ」だった。

 若鮎がぴちぴちと飛び跳ねるようにマーチングしていく彼女たちに、沿道を埋めた大群衆から地鳴りのような拍手と歓声があがり、はげしく手がふられた。彼女たちにふられるその手はこう言っていた。「こんなマーチング、はじめてみたよ!」「ものすごく感動したよ!」「心が震えたよ!」「ありがとう、日本!」「またアメリカにきてくれ!」京都の高校生たちは、マーチングによって、何百万ものアメリカ人と熱く交流をしてきたのだった。

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対話編
──このコラムを読んで、you tubeを見たが、ものすごい数の動画がのってるね。なかにはその再生が二百万とか三百万とある。
──アメリカのデズニーランドでも公演しているけど、この動画は一千万も再生されているよ。そしてさまざまな言語で彼女たちのマーチングを絶賛するコメントが書き込まれている。
──このパレードに参加した高校生たちのバントフェストが、スタジアムで行われていて、そちらの動画も載っているけど、これも見ものだよ。
──いや、これもぜったい見るべきだ。そのフェスタの司会者が、橘高校のバンドを紹介すると、一人の女の子を呼びだすんだ。
──そう、ヒトミカナマル、ヒトミカナマルはどこにいるって。
──フルートを吹いてる金丸仁美さんだ、彼女は英語がわからないから、なぜ自分が呼び出されているかがわからないからきょとんとしている。
──司会者は、彼女の左足は義足です。それは生まれたときから左足の膝から下がなかったのです。それでこのパレードに参加するためにも、骨などを削って猛練習してきたのですって紹介している。
──そう、それで金丸さんが司会者に横に立つと、司会者は彼女に、私たちはあなたの勇気と努力に感動していますと伝えると、観客からあたたかい拍手がわきおこる。
──素晴らしいシーンだよね。
──そう、そしてこのスタジアムでも彼女たちが激しくダンスしながら吹奏するシング、シング、シングにまた熱狂的な歓声がわき上がる。
──この動画もクセになる、毎日何度も見ていますなんてコメントがいっぱい書きこまれている。ほんとうにクセになる動画ね。
──いあ、ぼくもそうだ。彼女たちの行進をとらえたアメリカ市民の撮った動画が何十もあって、みだしたら止まらない。目に涙もにじむ。日本の高校生たちはアメリカですごいことをやってきたんだ。

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