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ゼームス坂物語

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記事一覧

あの朝の光はどうだ

町の片隅に点在する 塾に、分校に、子供団に、 きらきらと輝く 子供たちがやってくる。 閉塞の…

ウオールデン
1か月前
31

渡り鳥

 年が明けて、だんだん卒業式の日が近づいてくると、弘の耳に守が子供団をやめるとか、美雪も…

ウオールデン
3か月前
59

裸の仔馬

裸の仔馬  その少女がゼームス塾のドアをあけて入ってきたとき、長太はてっきり塾に入ってい…

ウオールデン
5か月前
83

七日間のキャンプ

七日間のキャンプ  冬休みに入ると、樫の木子供団は、草津で二泊三日のソリすべり合宿をおこ…

ウオールデン
6か月前
95

雨の遠征

「あなた……」  とつい口をついて出かかるときがある。しかし空っぽの部屋にただよっている…

ウオールデン
7か月前
92

モンスターはどこから生まれたのか

スピーチのレジュメ  一 およそ三十年ほど前、遠山啓という数学者が、「ひと」という教育雑…

ウオールデン
7か月前
90

いじめに苦しむ子供たち

これはみなさんとの出会いの場を、ボールを投げあう挑戦のスピーチとするために作成した問題です。熱球が投げ返されることを期待しています。 問題 「ゼームス坂物語」の第二巻「あの朝の光はどうだ」のなかに「ゲジ子」という章があります。そこに野村美香という少女が登場してきますが、クラス担任はこの少女に対応できず、学級崩壊をきたしたばかりか、その教師は二度と教壇に戻れなくなりました。この事例をテキストにして、もしあなたならばどのように対応するのか、この少女にどのように立ち向かうのか、ク

木立は緑なり

 長太もまた文章を書くのが苦手だった。蝶の仲間たちと「南の国から」という季刊誌を発行して…

ウオールデン
7か月前
83

樫の木子供団

 午前中、森閑としている児童館は、小学一、二年生があられる一時頃からざわざわしてきて、高…

ウオールデン
7か月前
81

白紙の答案用紙

 長太は疲れるなあと思った。一流企業のしかも出世街道を驀進しているビジネスマン夫人で、自…

ウオールデン
8か月前
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人生のデビュー

 その日、智子ははじめてできた彼女の部下と、新しい仕事の打ち合わせをしていた。そのとき、…

ウオールデン
9か月前
84

オランダ運河のタカシ通り

「お一い、弘さん。弘せんせ一い」  通りの向こう側から男が叫んでいた。長太だった。 「お茶…

ウオールデン
9か月前
78

樫の木に張り付けられたゲジ子

             漆があざやかに紅葉していた。ブナもカエデもミズナラもケヤキもま…

ウオールデン
9か月前
81

手の素描

 長太はその朝、新聞を広げていつものようにさあっと目を走らせながらページをくっていくと、衝撃で一瞬真っ白になってしまうような記事がのっていた。   〈中学美術教師、生徒のヌードを描く〉  美術教師が中学三年生の生徒を自宅によんで、言葉たくみに衣服を脱がせ、ヌードを描いていた。そのことが発覚して城南中学校では一大騒動になっているというのだ。大新聞のことだから、週刊誌のようにどぎつい記事ではなく、ただその事件の顛末をそっけなく記事にしているという印象だったが、しかしその見出しだ