さらば青春の光単独公演「四季折々」東京公演B感想
M-1の出囃子の前のコンビ名コールで一番好きだ。
「サラバ、セイシュンノ、ヒカリ!」
お笑いが大好きだ!といいつつ、実際に単独公演に行ったのは実は初めて。
お笑い単独公演童貞をさらばで捨ててきた、その感想。
※以下がっつりネタバレ、ご注意※
またさらばのお二人の敬称は外して話します。
森田さん、東ブクロさんすみません。
一本目「興信所」
ネタには関係ないが、暗転があけてさらばのお二人が見えた瞬間に
あぁいつも動画やYouTubeで観てるさらばのお二人や...
としみじみしてしまい、ネタの面白さよりも感慨深くなってしまった。
東ブクロ演じる探偵が森田演じる依頼者の妻と不倫してるんかなって
思っていたら全然違う方向に話が進んでいった。
四季折々、立ち上がる東ブクロ、そしてさらばらしいオチ。
一本目からとても満足。
結構後ろの方で観ていたけれど、
それこそ飛沫が見えるような位置で次は観たいと思う。
コロナ禍で単独に来るような観客だったので、笑いのポイントもしっかりとみんなで抑えていて、とても笑いやすい雰囲気だった。
二本目「施設王」
東ブクロ演じる孫が「オレオレ」って言い出したので、
お?老人ホームで直接オレオレ詐欺をするみたいなネタか?
と思ってたら全然違かった。
ポジティブにボケたことを捉える森田じいちゃんが、
いつのまにか可愛く見えてくるそんなネタ。
「よっしゃ〜」「あ、まって」「ちゃうか〜」
「ボケ」を弄るわけでもなく、センチメンタルになるわけでもなく。
さらばの綺麗な笑いのアングルとでも言おうか。ずれたアングルから対象を捉えるその視線は本当に、本当に、凄いと思う。
人を褒める時のレパトリーに乏しい自分の語彙力の無さを呪うが、
四本目のネタとはまた違った意味でとても好きなネタ。
三本目「奈良南高校吹奏楽部」
東ブクロ演じる部長が言いたいことがある、
という時点でははーんって思ってたら、案の定だった。
めっちゃこわない?!
のツッコミは森田にしかできないなぁって
思いながらゲラゲラ笑ってた。
ツッコミのワードとして、シコシコとかオナニーとかばんばん飛び交ってるのも流石だと思うし、このワードチョイスが一番おもしろいって確信してる雰囲気。下ネタ言ったろ!というよりも、ここで一番笑い取れるのはこれや!という強い意志。
こういうネタでずるいなぁって思ってしまうのは、いざ演奏させたとしてもどう転んでも笑えること。吹けるんかい!
もう一人吹かないやつがいた時点でもおもしろい、さらばは本当に見えない誰かを使ってコントを進めるのが上手だと改めて思った。
鼓舞する人のネタもそうだし、万引きしてんちゃうん!のネタもそう。
オチまで綺麗。
四本目「動くな!JASRACだ!」
最高のネタ。一番のお気に入り。
タイトルで会場に笑いが溢れてたのはこのコントだけで、きっとそれはJASRACは「そういうやつら」というイメージがみんなの中にあったからだと思う。
自分の曲を流してください、に至るロジックがめちゃくちゃ綺麗で
確かにそうやな、って思ってしまう。
この時点で三本目の吹奏楽部のネタみたいに、その歌がめちゃくちゃいい歌だろうが、そこそこの歌だろうが、ド下手だろうが、パクリだろうが、どう転んでも面白いからずるい。
「女JASRAC!?」とか何気ないワード二つくっつけたツッコミが
シンプルで素朴で一番美しい。
そして暗転後の山ちゃんのラジオ。
このためだけに呼ばれたと考えると、収録風景はかなりシュール。
ひたすら絶妙な東ブクロの歌を褒めるというラジオ。
五本目「爆弾魔の父」
幕間の映像で緩んだ口角が一転して引き上げられる。
そして谷口家のインターフォン越しに行われるインタビュー。
突然開くドアと登場する一見普通な初老の男性。
口を開くやいなや違和感に気づく。クスクス笑う。
あ、そうきたか
と思う頃には、我々はもう既に張り巡らされたピアノ線の中にいる。
少し動けばピアノ線に引っかかって笑ってしまう。
前半のシリアスな溜めが後半に爆発していく。
「大三元」のサラリーマン川柳に通ずる森田のアナウンサー演技。
「爆弾魔」という口にするのが憚られるような単語をキラーワードとして
観客の笑いを次々に引き起こしていくのは、さらばだからこそとしか言いようがない。
六本目「鬼食育」
YouTubeでもちらっと触れられていたネタ。といってもネタの内容で触れられていたわけではないが。
森田の冴えない農家の演技が、鬼食育を迫る父親の東ブクロといいコントラストになっていて、壁を挟んで外で耳をそばだてている森田の顔はきっとそんな顔をしていたんだろうなと思う。
逃走犯のネタに似た何かを感じたのは私だけではないはず。
七本目「インド」
東ブクロの出だしでいきなり笑ってしまった。
「町おこし」と「インドで人生経験が変わった」という異色の意識の高さがここまで意識の低いものへと生まれ変わるところに、さらばの腕の強さを見せつけられた。
四方八方を敵に回してそれでもなお面白いのは、JASRACと同じで観ている側の何かを代弁してくれているからかなとか思ってしまう。さらばが聞いたら、あほちゃうか!と言われそうだけど。
私も土佐で寝転んで年収1億円ほしいし、四万十川を汚くする仕事してみたいし、500%の乗車率を誇る電車に乗ってみたい。
さいごに
ずっと笑いっぱなしの単独。コロナということもあって
前日にチケットを取ることができたのは僥倖だった。
次があれば必ず行きたい。「会心の一撃」「真っ二つ」「大三元」「四季折々」ときて、何が来るだろうか。「五感」とかかな。
今回「四」季折々だからかもしれないが、ステージには四角のフレームを合わせて作られた立方体の枠組みが置かれていた。全てのコントにおいてうまい具合に利用されていて、どう変形するのかワクワクさせてくれる。
それにしても自分はやはり大道具が好きなのかもしれない。
そして合間合間に流れる曲や映像、一つ一つのネタをYouTubeで観ているだけでは絶対に伝わらない「幕間」がそこにあって、あの時間こそが一番高まる瞬間であることを改めて知らされた。
pillowsのライブだって、フッと照明が落ちると全ての思考が止まる。
ステージに全てが注がれる。空っぽになる瞬間に全てをかけている。
演出家や音楽を手がけた方の名前も要チェックだな、
そう思った単独だった。さらばのお二人、ありがとうございました。
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