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ボードゲーム紹介②:パンデミック

協力ゲームの地平を大きく切り開いたと言っても過言ではない、
2008年にマットリーコックの手によって手掛けられたザ・協力ゲーム。

ここでコの字でも出そうものなら、口うるさいnoteの運営に「この記事は〜」というおせっかいを受けてしまうので、時節を捉えた云々という言葉だけで読者の方にはお察しいただきたい。

さてこのゲームは、私のボードゲームの地平を大きく切り拓いてくれた作品であるため、人一番思い入れも強いし、かけてきた時間も桁違いに多い。

学生の頃は毎週レベルで集まって、深夜の六畳一間で20代前半の若者が4人で世界をパンデミックから救おうと格闘していた。敗北した際は70億人に向かって謝罪を繰り返していたが、いつも難易度を上げて敗北を繰り返していたので、サノスの比じゃないくらい人類を消し去っていたと思う。サノスは10年かけて指パッチン一回だが、われわれは45分で70億人くらいを消し去れる。

少し話は逸れるようだが、このゲームをどこで知ったかというと「たっくんのボードゲーム」というボドゲ愛好家の方のブログだ。今でこそボドゲについてまとめたWordPress製のなんちゃってサイトが大量に跋扈しているが、6年前にはそんなサイトも少なかった。

その中で、たっくんさんのサイトは全てのボドゲをA,B,Cの三段階で評価づけしており、無知だった当時も、そして今も変わらず非常にお世話になっている。リンクを共有しておくので、ぜひ見ていただきたい。

https://www.tk-game-diary.net/

そしてこの場でたっくんさんにお礼を申し上げたい。あなたのサイトがなければこんな面白いゲームの世界を知らずに生きていくところでした、本当にありがとうございます。

さてパンデミックの世界観とルールについて簡単にまとめつつ、その面白さの源泉に触れていこう。

パンデミックと私

こんなタイトルをつけると、危険思想の持ち主に思われるが、それも時代ということで甘んじて受け入れようと思う。

パンデミックはプレイヤーvs盤面というスタイルをとる、協力型ゲームだ。設定としては4つのウイルスが世界各地で猛威を奮っている状況から、プレイヤーが世界を救うというものである。

プレイヤーは移動・ウイルスの除去・カードの譲与・基地の建設・対抗薬の製作の5つのアクションから重複を含めて4つを選択する。ウイルスの色に合わせた4色のカードは移動するのにも、基地を建設するのにも、対抗薬を作るのにも必要なこのゲーム最大の重要アイテムだ。

各プレイヤーは異なる特殊能力を有したロールが割り当てられており、その能力を駆使しながらウイルスへの対抗薬を作成する。4つの対抗薬をある期限までに作成できればプレイヤーの勝ちだ。

パンデミックは何が面白いのか

①運が絡む詰み将棋

パンデミックは序盤と終盤でゲーム性がガラリと変わる。ただし、これはエピデミックカードを6枚入れた状況での話として聞いてほしい。プレイしたことない人向けに言えば、拡張セットがない状態での最高難易度だ。

序盤は既に散らばったウイルスを除去しながら、対抗薬を作るためのカードを集める作業を繰り返す。基本的には相談しながらBetterな選択肢を考えていくため、頭脳戦が得意な人はこれだけでパンデミックを楽しめると思う。リアルの世界でこれをやっている研究者がいると思うと頭が下がる。

後ほど説明するがプレイヤーの能力ごとにウイルスの除去が得意なタイプ、ウイルスの拡散防止が得意なタイプ、対抗薬の製作が得意なタイプと分かれているので、基本的にはその長所を活かす形で行動を選択していく。

協力ゲームの良いところかつ悪いところだが、4人のプレイスキルがある程度揃っている場合、あぁでもないこうでもないと自分では思いつかなかった選択の糸を手繰り寄せていくことができる。自分の思いついた選択が採択されたときの快感はピカイチだろう。

ウイルス側はエピデミックを起こすことで人類を窮地に立たせる。この回数が難易度に直結しているというわけだが、エピデミックはある一定の頻度内で発生するように調整されている。そのためそろそろエピデミックが来そうということが大体わかるようになってくる。

そのためにどこのウイルスを消しておくか、どの薬から作っておくかを考える必要がある。これも相談する際には非常に重要なポイントだ。

しかし終盤になるとBetterな選択肢を取るのではなく、Bestな選択肢が実現することを願って動くこととなる。それはどういうことだろうか。

プレイヤーにとって好ましくない形でエピデミックが発生すると一気にピンチに陥ることがあり、そうなるとプレイヤーからすると対抗薬の製作を急がねばならず、ウイルス拡散防止のアクションを取る余裕がなくなってくるのだ。

ウイルス拡散防止をアクションとして選択することもできるのだが、そんな悠長なことをしてはいられない。どこの都市がウイルスの手に落ちようが知ったことではない。とにかく私たちは対抗薬を作らねばならぬとメロスばりの意気込みで基地に急ぐわけだが、まぁ大抵は報われることはない。あの分かっていて見捨てる感覚もたまらなく楽しいわけだ。

楽しいゲームでは運と能力が絶妙なバランスで噛み合うように出来ている。運だけでは運ゲーと言われてしまい、プレイヤーが試行錯誤する余地が失われてしまい、能力だけでは初心者を巻き込んで楽しくプレイすることができない。

またこのゲームは能力を過信してBetterな選択肢を選び続けていられると勘違いしたプレイヤー(序盤)が運に縋るようになる(終盤)といったように非常に滑稽なことが起こる。ゲームの面白さの本質を突いた非常に素晴らしい作品だ。

②絶妙な難易度と設定

パンデミックは4人でやる場合、基本セットの以下のロールの組み合わせが一番強い。全ての拡張セットを持っているわけではないが、少なくとも赤と緑の拡張版には強いロールはいなかった。

検疫官・衛生兵・作戦エキスパート・科学者

検疫官は先ほどの例だとウイルスの拡散防止に役立つ能力だ。能力上ある一定の箇所に留まり続けさせられるので、基本的にはカードを渡す側となって縁の下の力持ちをやることになる。

衛生兵はウイルス除去に役立つ能力だ。常に前線に立ち、時にはカードを手渡す。非常にアクティブな動き方をする一方で、やることに対してアクションの数が足りなさすぎる。こいつをどのように動かすかでプレイヤーの腕が出る。

作戦エキスパートの重要性は何度かやらないと分かりづらい。とにかくこのゲームは移動手段に乏しい割に、マップが広い。そして基地がないと薬すら作れないというおまけつきだ。しかしそんな悩みももう大丈夫!作戦エキスパートがいれば、簡単に基地が作れます。基地のスクラップビルドはこいつにお任せ。大黒柱といっても過言ではない。

科学者はソシャゲならナーフされるレベルでぶっ壊れている。このぶっ壊れ具合を説明するには少し踏み込んだルール説明をする必要があるので、ご了承いただきたい。

このゲームで対抗薬を作るには該当の対抗薬と同じ色のカードを5枚集める必要があるが、手持ちの上限枚数は7枚だ。したがって4枚集めた時点で作製する対抗薬以外のカードは捨てる必要がある。

しかし科学者はなんと同じ色のカードを4枚集めるだけで対抗薬を作れる。これだけでぶっ壊れ具合がある人は相当センスがある、君も明日から世界を救わないか。そう科学者だけは、二つの対抗薬の作製を同時に進めることができるのだ。

二色のカードを3枚ずつ集めると対抗薬に同時にリーチをかけられる。しかも片方の作製条件を満たしたまま、もう片方の作製にリーチをかけていられる。カードが足りずに負けてしまうことが多いこのゲームにおいて科学者の能力は確実にぶっ壊れている。科学者以外に対抗薬を作らせるのは正直ナンセンスと言っても過言ではない。

そんなパンデミックのアベンジャーズだが、この組み合わせでやっても最高難易度のクリアはシビアだ。かなりの頻度で負ける。

すると逆に言えば、痺れるようなプレイ感を味わいたければアベンジャーズからロールを変更してプレイすればいいわけだ。

難易度に対する絶妙なレベル、そして難易度変更の多彩さはこのゲームの大きな魅力だ。私が友人とやるときはアベンジャーズを解散してやることが多いが、負けまくってアベンジャーズに頼ることが多い。強すぎるよこいつら。

ここからは雑談だが、他の能力が弱すぎる。そもそも通信司令員は完全に作戦エキスパートの下位互換だ。拡張セットにしても手持ちカードの制限が7から8に増えるロールがあるものの、対抗薬製作のダブルリーチをかけられない時点で弱い。

だからこそあえて弱いアヘンシャースを作って世界に挑むのもまた一興というわけだ。まぁ勝てないんだけど。

 ③【番外編】仲間内のノリ

これはゲーム自体の面白さというよりも私たちがプレイしていたときのパンデミック用語の紹介となる。こういうのも盛り上げるためには必要不可欠だと思う。

エピる:山札からエピデミックのカードを引くこと、このゲームはどのタイミングでエピデミックが起こるかを推測することが非常に重要となる。

FF外から失礼する(される):エピデミックが起こった際に、これまでウイルスの発生していなかった地域から一つが新たに選ばれウイルスが拡散される。いくらBetterな選択肢を取り続けてもこの一つの地域から計画が崩れ去ることが多いので、その失礼さをTwitterの作法に喩えた言葉。

さいごに

プレイ時間も慣れてくれば45分程度と重すぎない割に、運と戦略とを協力ゲームという形でプレイヤーで一体感を持ってプレイできる点が非常に高評価なゲームだ。

ただ途中にも触れた通り、プレイヤースキルに差があると飛び抜けた人が他の人に指示をし続けるような状況になってしまうので、そういった場合はできる人ができない人に合わせて口をつぐんでおくのがいいだろう。私は固定メンバとしかやらない誓いを立てたので関係のない話ではあるのだが……

プレイヤー全員で勝ち負けを共有できること、そしてルールと世界観が良くマッチしていること(まさか現実まで追いかけてくるとは思わなかったが)、ゲームの本質を体感できてかつ初心者でもマニアでも楽しめるのは唯一無二だろう。

値段も4000前後と決して高くないので、是非購入されたい。

私と一緒に世界を救わないか?


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