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満月

はて、これはどうしたことだろう。
うちの床に狼が寝ている。薄明かりに浮かび上がる灰色の毛並み、三角の耳に長い鼻面、寝ぼけた頭でもわかる。いや、わからないけど。ふかふかだなあ。
「帰れないから泊めてくれ」と連絡がきたのは数時間前、終電には早いし人を呼べる部屋ではないし、そもそも男の人を泊めるのは。さんざん渋ったのはむしろ自分へのブレーキだ。ばかみたいにどきどきしたけれど、現れた彼は言葉少なく、水を少し飲んで眠ってしまった。規則正しく上下する上掛けが、憎いような愛しいような。でも、ぐっすり眠れているならよかった。
――これが夢で、私も獣なら、触れても許されるかしら。
小さな部屋を、ただ月だけが見ている。

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