宿願

「大きくなったら橋を作る人になるんだ、っていうのがあいつの口ぐせでした。
 いや、ほんと小さな島なんで、若い頃は何かってと「出てってやる」って文句ばっか言ってたもんですが、本当に出てったのはあいつだけでしたよ。本土まで船でもまる一日かかるんだから、橋なんて到底無理だってみんなに言われながら、黙って勉強してるようなやつでした。それがまあ、まさか宇宙に橋を架けるなんてなあ」
 島の沖合にすっと立つそれは星をつなぐ橋。撚り合わされた炭素の糸が強靭にはりめぐらされ、遥か彼方まで続いている。どこか遠くへ行きたい。あの日の衝動のまま、とうとうここまで漕ぎ着けた。さあ出発だ。いま僕たちは、自分の足で空へ旅立つ。

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