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ゆれる

 目の前の吊り橋は見るからに頼りなく、峡谷を渡る風にふらふらと揺れている。踏み出した足元がぎぎ、と鳴り、一瞬気が遠くなった。
 それでもひたすら出口だけを見据えてじりじり進む。どうにか真ん中までたどり着いてひと息、次の瞬間ぐわんと世界が波打って、わけもわからず頭が爆発した。
「誰?!」
 なんとか首だけ回して振り返ると、犯人は真後ろで満面の笑みを浮かべている。
「へへ、吊り橋効果!」
「殺されたいの?!」
「……あれ?なんか間違えた?」
「初めから終わりまで間違ってるよ!!」
 このやりとりが失笑を買い、私達は先を急ぐことにした。すっかりしょげて、黙ってついてくる気配があたたかい。こんなやつ、絶対好きになるもんか。

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