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ふたり旅

「このへん、そもそも店がないのよね」
「えっ」
「大丈夫大丈夫」
 なんとかする、と旅慣れた彼女は笑う。
 昼下がりの小さな港。この日照りでは島民の姿もない。
 空腹を抱えてとぼとぼ歩いていると、今度は向こうでばしゃんと大きな水音がした。
「気持ちいいー!」
 桟橋の先、真っ黒に灼けた子どもたちに紛れて浮かぶ姿が眩しい。何を呑気な、と半ば脱力しつつ、リュックを下ろした僕は猛然とダッシュした。
 島の子に連れられて海水でべたべたになった身体を流し、そのままお昼に呼ばれた。揃ってそうめんをすすっていると、不意に「けっこんすんの?」と幼い声が問う。
「それもいいねえ」
「えっ」
 盛大にむせた視界の隅で、彼女が満足げに微笑んだ。

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