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魔法使いの弟子

 がつんと蹴躓いて思わず舌打ちする。
 あれから踏んだり蹴ったりだ。身寄りもなく、稼ぎもなく、何をしでかしたか血眼になって師匠を追う輩の来襲に耐え、もうたくさんだと家移りを決めた矢先。行方をくらました師匠が唯一置いていった、こいつは因縁の旅行鞄である。
 開ける気にもならなかったものが、さきほどの衝撃で留め金が弾け飛んだらしい。ひとりでに開いた中身に目を奪われた。
 鞄いっぱい、みっしりとつくりこまれたドールハウス。暗い色合いで揃えた調度にエメラルドのランプ。のそりと動いたのは…
「師匠?!」
「よう、遅かったな」
 まるで悪びれないその笑顔に腹が立つやらほっとするやら。この日僕が放った魔法は人生最高の出来だった。

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