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旅のおわり

「一緒にくる?」
 うん、と頷くと涙が転がりでた。ずっとひとりだった。骨董品級の探知機が唯一の相棒となって久しく、たどりついた水辺は諦めと似た青に澄みわたっていた。
 問いかけるかれは水をまとった蛇、流動する水の都市であった。綻びの目立つ機械の躰にはたくさんの生き物が棲みつき、無機と有機のモザイクに交信の光が乱れ飛ぶ。
 ぽかんと見惚れる私の頭を大きな顎ががぶりと咥えた。喉の奥に渦巻く水流、その向こうの途方もない煌めきに目が眩む。めまぐるしい変化のなかで、早々に馴染んで嬉々としている相棒の姿を見つけて声を上げて笑った。
 孤独は水にほどけていった。少し重くなった躰をうねらせ、水の蛇は滅びの星を行く。

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