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世界を越える壁は高くて分厚い

4月15日韓国で行われたボクシングの試合でメインを張る日本人選手の三者が負けてしまった。

世界タイトルマッチでもなく所謂世界の入り口みたいなところでみんな躓いてしまった。

正直ボクシングには夢も希望も無くなってしまったのだろうと思うが、日本でやるにはとても練習環境が貧困だと言わざるを得ないのだろう。

このプロモーターが嘗てWBOスーパーフェザー級の世界王者だった伊藤雅雪で韓国を中心に試合を行っているという。

カジノマネーなのだろう。

英語も出来る伊藤は嘗て江東区のボクシングジムにいたとは言え、練習環境はアメリカだったようでそうでもしなきゃ世界は取れなかったようである。

タイトルを取った後は横浜のジムに移籍するのだが、防衛に失敗し一階級上げようとしても日本人選手にも競り負けたりと戦績は思わしくなく、吉野修一郎にも負けてしまいグローブを置くことになる。

そんな吉野もライト級で日本人無敗を誇っていたが挑戦者決定戦に於いてTKO負けを喫してしまうのであった。

練習すれば果たして強くなれるのかと思うが、その辺りは分からない。

K-1に例えるがクルーザー級の谷川聖哉が外国へ出稽古へ行くようになったら負けはしたものの何とか外国人選手の猛攻に耐えられるようになっていたから別に修行に意味はないと言う訳ではなさそうである。

話はボクシングに戻して吉野と同じ三迫ジムで練習している拳四朗も本当は京都の父親のジムに所属しているのだが、環境に乏しいと言うことで居を東京に移しているようである。

ボクシング人口こそは他の格闘技と比べて多いがランキングを見るとA級に絞ればそんなに人は多いようには思えない。

B級もC級も相撲でいう所の幕下以下の予備軍で、殆ど友人同士で殴り合うみたいになってしまっているようにも見えるし、結局噛ませタイ人を用意しなきゃ興行が打てないという弱点も抱えているように見える。

この「嚙ませタイ人」というのが至って便利で試合をしてくれない選手の為にプロモーターが用意してくれるもので、対戦相手のタイ人の戦績をいちいち考慮しない。

タイには貧しい選手も多くて、それなりに用意したお金でやって来てくれるのだから便利な使い道として起用され、かつランキング維持のために役立ってくれるのである。

コロナ禍ではタイ人を呼べなかったので国内選手同士がぶつかり合うという稀有な状況が行われたが、こういうのを避けたかった陣営も多かったのではないかと思う。

試合が2年、いや3年間もなかった選手がいたという。

コロナ禍でランキングが停止したこともあったがこれじゃあずっとヴェールに包まれたままである。

強い幻想を維持できるかもだが、今回の韓国での大会に参加した岩佐亮佑も負けてしまいグローブを置くことになってしまった。

岩佐も元世界王者だったがコロナ禍で2年も試合が行われずに復帰戦を漸くこの前の試合で闘うことも出来たが、勝ちはしたものの本人自身もモチベーションが下がっていたという。

強さを維持するのもやっぱり常に試合が行われるという緊張感がないと駄目みたいである。

韓国だけれどもこの試合はU-NEXTで放送されていたという。

所謂有料先払い制のチャンネルである。

ボクシングは地上波で放送されていたがこれらは大体世界戦くらいで他が放送されることはなかったのである。

現実的にチケット収入やスポンサーに頼るのみで選手達の入場時のガウンやベストや膝まで長いパンツにはスポンサーのロゴがびっしり貼り付けられているのが良く分かる。

そうまでしないとボクシングでは食っていけず、あのアジア三冠を持っていた吉野とてアルバイト生活だったのである。

大手なら選手を海外に派遣して練習させると言ったことは出来るのであろうが、そんな金はどこにもない。

しかし日本のボクシングのレベルは決して低い訳ではない。

高いからこそ本邦でも世界タイトルマッチが行われたりするのだし、商売人のプロモーションが就いてたりもするし、タイトルが回って来なければ暫定だって用意してくれるのである。

世界タイトルが目前で挫かれた重岡兄弟達にも交渉で暫定タイトルに漕ぎ付けることが出来た訳である。

よく考えてみれば村田諒太だって一応は世界レベルではあったが、ランカーには二度くらい負けても二度取り返したりもするしWBAのスーパー王者にもなっていたりもするし、結局は金を積む政治力が無ければボクシングで王者にもなれない現実が横たわる。

村田が世界タイトルを手に出来たのも本人がヒーローインタビューで「みんなが嫌いなフジテレビと電通の御蔭」と言ってしまっていたので、こうやって期待をかけて本人のそれに応える力があれば実現出来てしまうということなのだろう。

視聴率が物を言う時代なら大手が味方に就いて投資も出来るだろうが、今の時代は視聴率も無くなりお金も入って来なければ、有料制に切り替えるしかないのである。

結局村田の試合も那須川天心の試合もフジテレビが行わずにアマゾンプライムで行われるようになってしまった。

地上波の無料で行われなくなったので注目度も低くなってしまうという懸念がなされるが、ボクシングの試合が億単位のお金で動くとなれば希望が持てるのではないか?

お金さえ積めば高い壁だって飛び越えたりぶち破る必要もなく迂回すればいいだけのことである。

現実に外国もこれが行われていて、団体は4団体以上に分かれ同階級に複数のタイトルも用意されたりKO負けしたのにダイレクトリマッチが行われたりするので一体世界最強って何なのって思ってしまう。

ボクシングは最高のスポーツであると同時に最低のスポーツであるとも感じる。

ボクシングは賭け事として成立しているので八百長に対して厳しいかも知れないが、準備段階での勝つ算段としての根回しが行われるのだろうと感じる。

丁度選挙で維新の府知事が勝ったことで大阪でのIRが本格的に始動するという。

IRと言うのは統合型リゾートのことでそこで合法カジノが行われるらしい。

村田の試合もそうだったがロープのスポンサーにそうしたIR関係のロゴが就いていたのでボクシングだけでない格闘技(RIZINなんか)も今後そうした賭け事の対象になったりもするのだろうと感じる。

正直お金が入ればイギリスのようにボクシングがめっちゃくちゃ強くなる可能性も高くなるだろうが、同時に貧困者も多く出しそうな気がする。

イメージは競馬やパチンコのように依存症の人々がすっからかんになっても居着いていたりするものだ。

多くを手にするかもしれないが多くを失うかも知れない。

日本人はそうした分岐点に立っている。


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