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旅行先での映画体験

先日、東京旅行に行った。私は映画館が好きなので、旅行に行っても各土地の映画館で映画を見たりするのだが今回の東京旅行では3つの作品を3つの映画館で見た。良かったり微妙だったり作品の出来は様々だったが、どの作品も心に残って離れない。
最初の作品を除き、恐らく地元の映画館で見ていたら数ヶ月後には忘れている作品もあったでしょう。しかし、見知らぬ土地で見る映画は新鮮そのものでそれらの映画を行き慣れた映画館で見るのとは違う格別の体験にさせてくれた。

1本目 『ケイコ 目を澄ませて』@テアトル新宿 1/5(木)

『ケイコ』は評価が良かったが、地元の映画館は音が悪いので旅行までの約3週我慢して三宅唱監督が音響監修しているテアトル新宿のスクリーンで鑑賞した。

私が見たのはレイトショー。札幌から新函館北斗まで特急で行き、函館から東京までは新幹線というルートを取ったため12時出発にも関わらず東京に着いたのは19時。この日は新宿に泊まるということで、近場の映画館で見るのが精一杯と思いテアトル新宿へ。

お正月明けの木曜夜のレイトショーということでガラガラなんじゃないかと思っていたが、評価の高い話題作だからか、それとも東京パワーなのか、20〜30人くらいはいたんじゃないかと思った。札幌なら多分3〜4人しかいないだろう。

そんな事実に驚きながら、テアトルシネマグループの映画館限定『ケイコと涙の薄暮ソーダ』を飲みつつ鑑賞する。

バイオレットフィズ風ゼリーが良いアクセントで美味かった

映画が勿論素晴らしかったが、東京のど真ん中新宿のレイトショーで見たというのが大きく心に残る原因となっただろう。
物凄く自分が人生を謳歌している人間のように思えたし、帰り道夜風に当たりながら映画の余韻に浸りつつホテルに帰るその道のりは何にも変え難い幸せだった。ケイコに影響され、意味もなく走って帰ったりもしてしまった。とにかく良かった。

2本目 『キャプテン・ノバ』@ヒューマントラストシネマ渋谷 1/6(金)

この日はヒューマントラストシネマ渋谷で『キャプテン・ノバ』という作品を鑑賞した。

「何だその作品?」と思う方もいるだろうが、この作品は『未体験ゾーンの映画たち』というヒューマントラストシネマ渋谷のみで行われている特集で上映されている。
『未体験ゾーン〜』は毎回30本くらいの作品を小出しに週替わりで上映し、本来はDVDスルーの作品を劇場公開する試み。箔付の意味合いもあるのだろう。
ギリ劇場公開に達するかそうでないかのレベルの珍品や普通に全国公開しても良いくらいの傑作が入り混じっていることから宝探しのような感覚で見に行くファンも多いらしい。

今まで東京に行くのが夏ばかりだったので、毎年1月ごろに開催されている『未体験ゾーン〜』には今回が初参戦である。

『コントロール』と書いてあるのは、『キャプテン・ノバ』の上映後に写真を撮ったため

時間ギリギリでヒューマントラストシネマ渋谷に到着、予告なしだったのでいきなり本編が始まるのも新鮮だった。

未体験ゾーン作品の中で時間帯的に見れそうなのが今作だったので鑑賞し、結果はまあ劇場公開にギリ達しないレベルの作品ではあったと思うが『未体験ゾーン〜』の中では良い方だったのではないかと思う。オランダ製SF、意外と規模がデカかった。

客の入りは金曜の昼にも関わらず、30〜40人ほど入っていた。東京ってスゲーなとここでも実感。

C)2021Keplerfilm

『未体験ゾーン〜』に初めて参加できたという嬉しさと、そんなに悪くない作品を引いたという嬉しさ。ダブルの嬉しさで鑑賞後は気分が高揚した。
見たスクリーンも歪な感じではあったけど悪く無かったし、ヒューマントラストシネマ渋谷が近くに欲しいなと心から思った。好きな映画館。

その後渋谷の映画館巡りをし、今年の4月ごろ休館するBunkamuraル・シネマのベンチで今作の感想を書き終えた後、駅で迷いながら何とかスカイツリーに。

3本目 『離ればなれになっても』@TOHOシネマズシャンテ 1/8(日)

今作は特に見る予定では無かったのだが、なんか特に見たい映画も無いし(この時期の東京、ほとんど札幌で見れる映画ばかり上映されていた)、なら地元の音質悪い映画館でやってる作品を見ようと思い鑑賞に至った。

実はTOHOシネマズシャンテに訪れるのは2回目である。
3年前、デヴィッド・ロウリー監督の『さらば愛しきアウトロー』を鑑賞した(後々気づいたのだが、シャンテで同じデヴィッド・ロウリー監督の『グリーン・ナイト』を上映していて、そっち見れば何となく関連性もあって良かったなと少し後悔)。
昔ながらの雰囲気があり、TOHOシネマズという看板を背負っているのにミニシアター系というのが好きだった記憶がある。その記憶を元に今回も行ってみた。

まず今年の秋ついに札幌にTOHOシネマズが誕生するとのことなので、それに備えてTOHOシネマズのポイントカード「シネマイレージ」を作成した。

多分札幌に初上陸ということでシネマイレージ作成に長蛇の列が予想される。それを見越して今回作成した。
これでTOHOススキノが出来た時、シネマイレージ作成列に並んでいる人たちをニヤニヤ見ながら自分は優越感に浸ることができる!
これからTOHOシネマズにいる土地に旅行に行く札幌市民は絶対その土地でシネマイレージを作った方が良い!数ヶ月後、マウントを取りまくりの薔薇色映画人生が多分待っている!

客は30人くらいで、老齢の夫婦から大学生くらいのカップルと客層がまばらで面白かった。

小腹が減っていたので"ちょびっとチキン"を頬張りながら鑑賞(どうやらちょびっとチキンは札幌シネマフロンティアにもあるらしい…)。

『離ればなれになっても』は傑作とまではいかないが良作で、登場人物の自己中心加減にちょっとイラつきながら見ていたのだがラストは不思議と前向きな気持ちをもたらしてくれて不思議な鑑賞体験だった。

映画館の雰囲気の良さ+日曜の夜に見る映画の儚さ+この日が東京滞在最後の映画だろうなということで言わば「この映画が終わる=札幌に帰る時刻が近づいている」と現実が押し寄せてきて、映画の前向きさとは裏腹に悲しさがやってくる。

シャンテを出て、煌びやかなミッドタウン日比谷を眺めながら「東京に住みたいなぁ…。」と東京コンプレックスを炸裂させ泣きそうになりながら有楽町駅に向かいメトロでホテルに帰った。

こんな不思議な感情を味わってのは初めてで、それ故に『離ればなれになっても』は自分の中で忘れられない映画体験になった。
僕と東京さん、離ればなれになっても心は一つだよ。

旅行先で映画なんてと思った人にこそ体験してほしい。今までにない鑑賞体験ができるし、帰ってきて1発目の映画は地元の良さも再認識できる。

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