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はたして加害者はどちらか?

外ももう真っ暗だ。
閉店までもうひと頑張り、レジ内で文庫のブックカバー折りをしていたら
制服姿の少女二人が、泣きながら店内へ入ってきた。

「たすけてください」

二人とも、ひどくおびえていた。

とりあえず落ち着かせるために、二人をバックヤードへ案内し、
事情を聴くことにした。
一体、何があったのだろう?
二人とも、しばらく泣いて話をすることができなかったけど
すこしづつ、ぽつりと話し出した。
大丈夫かな。もしかしたら、話しづらいこともあるかもしれない。
そう言う、話しづらいことを、誰かにされてしまったのかも…。

「男の人に」
あ、やっぱり。
「追い回されて」
「自転車のカゴに、赤い字で脅迫みたいな事書かれて入れられて」
「私たち、すごく怖くって」
思い出したのか、ハンカチを目に当てて、女子高生は小さく震えた。
ひどい事をするな…、かわいそうに。

「その人キモかったんです」
うんうん、かわいそ……

んん…?

「キモくて」
さっきと全く変わらず震えて泣きながら話す女子高生。
それ、震えながら喋るセリフじゃねえな…?

「キモいから」
「そうそう、キモかったんです。」
「だから、私たちでそいつの事キモいキモいって言って」
「そしたらその人、怒っちゃって…(泣)私たちの事、追いかけてきて…(泣)」
「すっごく、こわかったよぉ…(泣)」
「ほんと、ひどいよぉー…(泣)」

「くさもちさーん、ごめんね、レジ入ってもらっていい?」
「……あ、はーい…?…すぐ行きます…」

私はチベスナ顔で現場(レジ)へ向かった…。
なんだかレジが忙しくバタバタし始めて、かかりきりになっているうちに
彼女たちは帰ったようだった。

彼女たちは男性に追い回されて、相当怖かっただろう。
力ではかなわないのだから、泣いてしまったのもわかる。
追いつかれたりしていたら、正直何がおきていたかわからない。
もしかしたら事件に、なっていたかも。

でも。
ぶるぶる震えていたし、すごく怖かったのはわかるんだけども。
…、でもさあ…。

悪いの、そっち二人じゃね…?
えっ何被害者ぶってんの…。

これ、エスカレートして男性が女子高生に暴力でもしていたら
まあ事件になるし、男性は捕まる。
裁きを受けることになる。
表面だけみれば、かわいい女子高生二人を襲った
なんて卑劣なやつだ、ということになる。
なんて女子高生かわいそうなんだ、となる。

そして自分たちが被害者だと信じて疑わない二人は、
警察の取り調べの時に。
自分たちがその人を焚きつけてしまった事を、言うのかな?
(いやあの時べらべらしゃべってたから言うかな?あんな
わたしたちまったくわるくないの!って初めて見たな)
警察もチベスナになり現場へ向かってしまうのでは。

まあ事件になっちゃったらこの状態では逮捕されるのは
男性になってしまうのだけども。
でも、そもそも「これ」を始めてしまったのは
彼女達なのだ。

先に仕掛けてきたのは、彼女達なのだ。

たかが悪口で、って思う?
鋭い言葉って、やわらかい心をえぐってくる。
言葉だって、目に見えない暴力だ。
あなただって、きっと言われたら嫌でしょう?

あの女子高生だって、自分がキモいだの言われたら悲しいだろうになあー。
なんでそんなことがわかんないんだろう?
それ言わなかったらなんにも怖いことは起きなかったよ??

殴るやつは、殴られる覚悟だってすべきなのだ。




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