手抜き介護 153 マイペースの勝利
父は今、総合病院の心臓外科、血液内科、消化器内科、耳鼻科に通っている。以前は1日に全部詰め込んでクタクタになっていたのだけど、今は2回に分けて通っているので、往復の負担を除けば少し楽になった。
今日の予約は10時半。比較的人が少なく、スムーズに進行しているようだと思ったら、10時20分ころ父の番号が表示された。時間前に出るなんて、初めて。父はどこかに行っていて、いない。
血圧を測る場所、トイレ数か所、モニター前を巡ってようやく見つけた。「番号、出てるよ」と診察室前に誘導したところで、父が「今日の血圧まだだから測って来る」と言いだす。診察には血圧手帳を見せるから、今日の数値がないと、と思ったらしい。
そんなの、ここ数週間の傾向を見ているだけだし、今急いで歩いてきて血圧上がってるし、第一もうすぐ呼ばれるし。でも私の言葉など意に介さず、またホールへ戻っていった。いつも通りの進行具合なら、多分間に合う。でも診察時間の短い人が続いたら、すぐ番がくる。呼ばれたときいないと、ペナルティのようにかなり後ろに回される。自分ならこんな状況でここを離れるなんて、出来ない。
でも今日の午前中は、この病院しか予定がないから、遅くなっても問題ないか。本人がそうしたいんだし。診察室からは医師の笑い声が聞こえてきて、「いいぞいいぞ、もっと盛り上がれ」と思う。そして、父は十分間に合った。
この人、ずっとこんな風にして生きてきたんだろうなあ。その横で、母はいつもイライラしていたのだろう。医師は今日の血圧の高さに一瞬目を留めたが、低い日もあるからと、いつも通りの処方をしてくれた。