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手抜き介護 104 1万円あげる

先日実家の車を売った先は、家から少し離れたところにある。行きは車だから良いけれど、帰りのバス路線を調べてみたらちょっと気が遠くなった。歩けば2時間近くかかりそう。その日のうちに実家から自分の家に帰る予定だったので、タクシーを使うことにした。

私の交通手段なんて父は全く考えないけど、母は「車を置いた後、どうやって戻るの」と訊いてきた。「タクシーで」と答えたら、1万円札を出して、「いろいろ手間かけたから、これ使って」という。「いや、いいよ」「いいからいいから」という、日本中で常に繰り返されている押し問答が起きる。

前にも同じようなことがあった。まだ母が普通に生活していたころだから、私が何を手伝ったか覚えていないけど、ある時突然「アンタ、5千円札持ってる?」と訊いてきた。ないと言ったら、私に何かのお礼で5千円あげたいが今1万円しか持っていない、と。チップのおつりかい! 万札そのままくれても良いんだよ笑。

お金への執着は強い人だから、最大限の気持ちの表現なんだろう。「これは私のお金だから。お父さんのお金じゃないから」と何度も言っていた。「気持ちだけもらっておく、ありがとう」と、私がいつも使うセリフを言ったら、黙ってお札をしまった。「お金をあげる」という気分の良さを拒否して申し訳ない気もするけど、すごく大切に使っているのに受け取るわけにはいかない。でもそんな風に考えてくれるのは、ありがたいことだなと思う。


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