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手抜き介護 98 ピザが食べたい

母を眼科の定期検診に連れて行った。いつもの目薬が処方されるだけと思っていたら、最近気になる点がいくつかあったらしく、訴えに応じて眼圧、眼底、視力と検査が増え、最後はレーザー治療を受けることになった。

すでにお昼も過ぎて、車いすに座ったまま3時間を超え、首が痛いと言う。ちょっと横になれればいいけれど、待合室にそんなスペースはもちろんない。レーザーの後は30分待ち、もう一度眼圧を測るとのこと。午後から別の予定があったので、帰りに寄るつもりだった昼食の買い物を、この30分で済ませようと思った。

「ピザが食べたい」

買い物に行くと言ったら、こんな状況でも明快な希望が返ってくる。ピザかー、お店この辺にあったかなと思いながらエンジンをかけると、ガス欠ランプがついた。急いでいるときに限って! スタンドに寄り、コンビニで冷凍ピザを手に入れて病院に戻ってきたら、すぐ名前が呼ばれた。

全てを終えて家に着いたのは、1時半。父の昼食はとうに済んで、歯磨きも終えている。でも温めたピザを、母が執拗に勧める。

「いいから1枚食べてごらんって」
「メシは済んだ」
「おいしいから、ほら」
「要らない」
「ダメ!」

え? ダメ? 相手はピザなんて嫌いだし、間食もしない人だ。でもどうしても食べさせたいらしい。最後は父が折れて「夜に食べる」と言ったが、それが聞き取れなかった母は「イヤな人!」とプンスカ。どんなことでも不満と怒りにつなげられる、天才的な能力を感じる。


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