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手抜き介護 ②同居

この春から、義父と暮らし始めた友人の話。
義父は大腸がん経験者なので消化のいい食べ物が良いのだけど、パンチのある味が好みで悩ましい。届け物をしたときに私も会ったことがあるが、父と同じ90歳とは思えないしっかり具合だった。

耳も遠くないし、体型もがっちりしている。友人は、義母が生前言っていた「退職したら、ここで一緒に住んでくれると嬉しい」という言葉が残っていて、迷うことなく同居を始めた。家財道具は、ほとんど処分したらしい。

ところが、男一人では家事に困っているだろうというのは勝手な思い込みで、お父さんは結構のんびり暮らしていたようだ。大きなスーパーがすぐ目の前にあるから食事には困らないし、部屋が多少汚れていても気にならない。お洗濯ものも、お風呂にあまり入らないから大して出ない。そこに細かいことを言う息子たちが現れて場所を占拠し、けんかになることが増えたという。

夫が勢いに任せて「それなら出ていくか!」と言うと、義父は黙ってしまう。優しい彼女は間に挟まれて困ると言っていた。私が自宅に帰る3日前に会ったときは、おなかの調子が悪くて入院したというお父さん。「入院している間に、使っていない荷物を少し片付ければ」なんて言っていたら、その3日後、訃報に接した。

高齢者は急変するとは聞くけれど、あまりに急すぎて言葉もみつからない。彼女が今、どんな心境でいるのか、頑張っていた自分をちゃんと認められているか、気になっている。今となりにいたら、そっとぎゅっと抱きしめたいのに。

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