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みじかい小説 #151『ホームセンター』

 田舎のいいところは、なんといってもホームセンターがいくつもあるところだろう。
 車で移動できる距離に4,5件はある。

 なかでもさとしが休日のたびに足しげく通っているのが、ナフコだ。

 ナフコは普通のホームセンターとは違い、「ちょっとおしゃれなイマドキのインテリア&DIY&アウトドア&園芸用品」を売りにしている会社だ(つまりわりとカジュアルなホームセンター)。
 九州は福岡県北九州市に本社をおく全国チェーンで、休日ともなれば若いカップルや家族連れでにぎわっている。

「さあ、今日はどれにしようかな」
 敏はひとり、苗の中を歩いていく。
 自宅の庭に次に何を植えるかは、もう考えていた。
「ミニトマト」と書かれてあるカードを見つけると、これこれ、と敏は苗を見比べる。
 葉がしおれているものよりは、ピンと元気なのがいい。
 長いつきあいだから、苗はしっかりと選ぶ。

 敏はいくつか見繕うと、次は花のコーナーへ移動した。
 自宅の庭には花壇もある。もうそろそろ次のシーズンの花が欲しかったところだ。
 どうせだから店内に置いてあるテラコッタの鉢をいくつか見てみようか。
 敏はミニトマトの入ったかごをぶら下げながら店内に入る。
 店内は空調がきいており、四月にしてはむっと暑い今日の日和にたいしてひんやりとした温度に保たれていた。

 敏は「プランター」コーナーへ移動する。

 あったあった。
 赤土色のテラコッタの大小の鉢が乱雑に並べられている。
 庭の土は黒いから、テラコッタの赤によく映える。
 自宅の庭の景色を思い浮かべながら、どこで何を育てればどういった景観になるのかを計算しつつ、敏はテラコッタの中を歩く。

 結局、敏は一番小さな手乗りのテラコッタを購入した。
 これに外で売られていたガーベラの花を植えるのだ。
 ふふ。
 敏は頭の中におおいに茂った自宅の庭を思い浮かべながら、ひとり意気揚々と家路についた。


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