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弾き語りのために、ボイトレ始めた④

「今回特別に、割引で……」
と先生が提示した金額は、なんと、わたしの給料の三ヶ月分を軽く超えた金額だったものだから、わたしは思わず声をあげたのだが、確かに、そりゃそうだよな、という考えもどこかにあったし、びっくりするなんて失礼だ。

「すみません、相場が分からないので、ちょっとびっくりしてしまって」
というわたしに、先生は「そうですよね。確かに安くはないと思いますが、そうじゃないと、頑張れないんですよ。」と、おっしゃる。確かにそうかもしれない。

とは言え、即答できる金額じゃなかったから、よく考えてみます、と伝え、
無料個別レッスンを終えた。

さあ、どうしよう。でも、諦めたくない。きっと、後悔する。
欲しかった高価なジャケットを、諦めきれずに後日買いに行って、売り切れていた時の悔しさを何故か思い出していた。

一生に一度、こんな買物してもいいんじゃない?きっと、これが最後だよ。という、内なる声に押されて、エイっとネットバンキングの振込みをしてしまった。もう、後戻りはできない。

二日くらい後だったと思うが、メールに添付されたURLをクリックすると、会員だけが見ることの出来る年間のカリキュラムが届き、ひと月ごとにレッスン動画を開くことが出来て、先生のレッスンを何度でも見ることが出来ることになった。

こうして、夫にも会社の人にも、友だちにも内緒の、わたしのマル秘ボイトレ生活がとうとう始まった。こんなにワクワクするのは、すごく久しぶりだ。あとは、頑張るだけ。きっと、うまくいく。そんな気がしていた。



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