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地域アートプロジェクトを「地域活性化」で誤魔化してはいけない理由

地域アートプロジェクトの運営に関わっている大学生です。卒論を書いていて、いくつかアートプロジェクトを持続させるための方法について思うことがあったので書きました。

アートプロジェクトに限らず、いわゆる地域活性化的な活動をしている方や非営利組織で活動している方、ちょっと真面目なサークル活動してる方など、参考になれば幸いです。

そして、大層な見出しを付けましたが、今から書くことが唯一の正解だとも思ってはいません。
議論のネタ出しだと思い書きました。全面的に「異論は認める」スタンスです。

なお、ここでの「アートプロジェクト」とは、比較的小規模で行政からの予算メインではなく、自力で資金調達する部分が多いものを想定しています。

目標を定めずゾンビのように続く活動

世の中には目標を定めずゾンビのように続く活動が結構ある気がしています。あれ、これ何のためにやっていたんだっけ…と思いつつ使命感で続く活動の多いこと。

特にアートプロジェクトはアートがメインの要素になっている分、活動目標が抽象的になりやすく、なぜやるのかが一層明確になりにくい部分があると思っています。

そして地域アートプロジェクトで用いられがちな「地域活性化」というマジックワード。この言葉も人によって思い浮かべるものがバラバラであり、具体的に何をすればいいのかが明確になりにくいですよね。

なぜ「目標」が必要なのか

企業であれば「お金を稼いでさえいれば」活動が回ると思います。(ブラック企業でもそうかもしれませんが…)

従業員に関して言えば、食べていくために働くというのも主たる仕事の動機の一つかもしれません。
お金を稼げばOK!わかりやすいですね。

しかし、お金が得られないような有志の活動であれば話は別です。お金にならないのになぜ活動をやるのか。その問いに答えられるだけのものが用意できていなければ活動は持続しません。人が残ってくれません。

アートプロジェクトの目標例

活動目的、企業だとビジョンとかミッションとか言いますが(意識が高い感じがしてなんかアレですね)
要は、どんなことをするためにこの団体があるか!です。

例えば、大分のBEPPU PROJECTでは「アートが持つ可能性を社会化し、多様な価値が共存する世界の実現を目指します。」という言葉をミッションにしています。これに加えてビジョン、バリューと具体的な内容を設定。活動を行い利益を得て持続的な活動を進めています。

BEPPU PROJECT about us より)

目標設定は「何を対価に繋いでいくか」の設定

目標設定をし、より具体的な活動の方向性を詰めていくと、このアートイベントがこれから何を実現するか、どんなことを実現して価値を提供するかが決まります。

つまるところ、これは何を提供し、どんな対価を得ることで活動を繋いでいくかを考えることに繋がります。

ファブラボ鎌倉代表の渡辺ゆうかさん、もともと都市計画系のご出身だったようですが、「ファブラボもアートプロジェクトもスタートアップと同じで初期投資は補助金かもしれないが、『何を解決し、どんな対価で稼いで持続するか』を考えないと続かない」という趣旨の発言をされていました。

ファブラボのビジョンは以下の通り。

個人による自由なものづくりの可能性を拡げ、「自分たちの使うものを、使う人自身がつくる文化」を醸成することを目指しています。(What's FabLab? - FabLab Japan Networkより)

しかし、その運営を継続するため、ファブラボ鎌倉では企業研修やコワーキングスペースの提供などによって利益を得ているそうです。ファブラボの資産を活かしながら、活動を持続するためにしっかり価値を提供し対価を得ています。

アートプロジェクトであれば、地域の支援者の方々、アーティストの方々、活動を行う事務局の人々などへの対価(インセンティブ)が必要でしょう。

例えば「教育」を切り口にするなら、地域への教育活動を行っていくことで、子どもたちが成長し、それによってメリットを受ける父兄や教育機関のサポートを得ながら活動していく。

もしくは「観光」ならば、地域への集客に貢献し、地元の商店街が利益を得るということの対価としてサポートを得ながら活動していく、ということが考えられるでしょう。

対価は金銭であるべきか、それともそれ以外の無形のものでもいいのか。それは一概には言えませんが、どちらかだけでは多くの人を巻き込んでずっと続けていくことは難しいと思います。

無形の対価の代表例と言えば「やりがい」ですよね。

やりがいはもちろん大事です。でもやりがいだけでは「搾取」になってしまいますよね。やりがい搾取、ダメ。絶対。

正しい「やりがい」の作り方

目標設定…地域の課題…やらねばならないこと…というふうに考えていくと、どうしてもちょっと堅い感じになっちゃいますよね。

「やるべきこと」だけを考えていくと、「確かにそれめっちゃやったほうがいいけど、うちらがやる必要ある?」的なことが目標になってしまいます。

ビジネスコンテストからビジネスが生まれない理由にも通じるところがありますね。結局「やりたいこと」が活動に入ってないと続きません。ここが正しい「やりがい」の源泉だと私は考えています。ここは疎かにしてはいけません。

コミュニティデザインで有名なStudio-Lの山崎亮さんも近いことを言っていました。山崎亮さんは、「どう働きたいか、どう生きたいか」という「生き方」を経由し、やることを決めるワークショップを地域で行っているとのこと。

「やるべきこと」だけで考えると、地域にはいろんな課題があり、結局全部手をつけようとすれば「なんでも屋」になってしまいます。

「地域活性化」を標榜するとうまくいきにくいのもそこかもしれません。地域の方から「なんでもやってくれそう」という期待を向けられますが、その実、具体的な目標が示されていないので、どう手伝ったらいいのかわかりにくくなってしまうのです。

「やりたいこと」と「やるべきこと」、あと現実的に考えて「できること」を組み合わせながら考えていくと、良い目標が定まりそうですね。

意義のある目標を、ちゃんと対価を得ながら目指していくことで、楽しく活動ができるのではないかと思います。

目標がないと改善ができない

そして(これは私の卒論にも関わる部分ですが!)、大事なのは目標がないと、活動を続けたとしても改善ができない、ということです。

冒頭に書いたように、企業であれば、とりあえずは「どれだけ稼いだか」が良い活動と悪い活動を分ける明確な指標になります。稼いだらOK!ですからね。

しかし、非営利組織においては何を指標とすべきでしょうか。これは「設定しなければわからない」のです。

目標にどれだけ近づいたか、それをしっかり計測することで、個々の活動の良し悪しも理解できるようになります。

例えば「地域活性化」という目標はふわっとしすぎています。しかし、それを具体化した目標として「教育」があれば、子どもたちの行動や学力を計測する手段を講じることができます。

それが回り回って、地域の未来をつくることに繋がると分かれば、本当の意味で「地域活性化に貢献しています」と言えるかもしれません。

反論への反論!

最後に、想定される反論への反論を少し書いて終わろうと思います。

アートプロジェクトというのは、アーティスト含めいろんな活動がぶくぶくと巻き起こるところが魅力だったりします。

目標を一個に絞ったら、いろんなことやりたい人がいるのにできなくなっちゃいそうじゃん!という批判が聞こえてきそうです。

これは一理あると思います。その上で、いくつか対処法があると私は考えています。

ひとつは、いろいろなことをやりたい人がいる、ということを強みだと考えて、「多様な活動をどんどん生み出していく」ことを目的の中に組み込んでしまうということです。
地域活性化の定石として、自発的な活動が生まれる状態を目指すのはあるあるですよね。

そしてもう一つ、一回多様な活動というやつをばっさり諦めてみましょう、ということです。
既にたくさんの活動を抱えてる組織にありがちかもしれませんが、昔からやってるから、という理由で目的のない活動を続けるのはやめたほうがいいでしょう。

組織として本気でやれる、やりたいと思える活動に絞って注力したほうが結果的に成果が出ることもあるはずです。

目標を絞ったことによって、本当に意義のある活動がぶくぶくと巻き起こるような組織になれるかもしれません。

そしてもう一つ、「やりたいからやってるんだ!サークルみたいなもんだから、目標とか知らん」という反論もあるかと思います。事務局中心者、コアメンバーであれば、その気持ちもわかります。

ただ、「サークルみたいなもんなら、ちゃんと協力者に『楽しさ』を対価として提供することを真剣に考えたほうが続くのではないか」と思います。

結局、やりがいや使命感で膨大なタスクをこなし続けるのは難しく、協力者が疲弊すればいずれ続かなくなります。万人が勝手に楽しくなる組織は自ずとできるものではありません。

もし「続けたい」という思いがあるのならば、せめてサークルらしく、辛くなく、楽しいものであるべきです。しっかり楽しい活動内容を選び抜き、効率化し、手の届く範囲にやることを収める選択が必要です。なんか働き方改革っぽい話になりましたね。

おわりに

約4年間、「みなとメディアミュージアム」という組織に関わって思ったことをざっくりとまとめてみました。

まだまだ卒論を書き進めていき、いろんな意見を受け取る中で考えは変わっていくと思います。

ぜひご意見をお聞かせください。まとまりのない長文でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました!

(2017/11/18 反論の反論に追記しました)

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