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木の音と自然の息吹

はじめに

「昔はいい羊がいたんです」
彼は言った、羊?どういうことだろう。
よくわからなくなって聞き返すと
「ピアノの弦を鳴らすハンマーは、フェルトを固めて作られています。フェルトは羊の毛でしょう。その羊が、昔は野原でのびのびといい草を食べて育ったんですよ。今はなかなかそうはいかない。」

その途端、私の目の前に、広々とした草原で羊たちがのどかに草を食んでいる様子が浮かんだ。草原に風が吹き、草や葉が音を立てる。そこから音楽が生まれるのを感じた。

物語が立ち上がるのが見えた気がした。   

調律師の青年が、音楽の森に分け入り、迷いながらも一歩一歩成長していく物語を書いた。



宮下奈都さんのエッセイ
「緑の庭に寝転んで」の一部に、

羊と鋼の森(調律師の青年の物語)の着想を得た際の逸話が書かれていていました。


作品を演奏する立場としては、まず演奏する曲を前にして、その作曲家の想いを知ることから始める。時代背景を考える。

和声やメロディー、リズム、スラー等が何を意図していて、それに対して自分自身どんな印象を受けるか、どう弾きたいか、どう聴こえてほしいかとかそんな想像からはじめる。

楽器の特性やしくみを知って、自分の体のことも知っていることも大事で、そのうえで奏法も考える。


宮下さんの書かれた文章は、私たち演奏者の発想とはかなり異なっている印象で、とても斬新で新鮮だった。




自然の力


年齢をかさねたせいか? 最近私は、ピアノを弾くと頭と心がほぐれることを感じるようになった。今までにない感覚で。


ピアノの鍵盤に触れただけで、ものすごく木のぬくもりを感じたりする。

響板に響く音、倍音、色んなものが体に染み渡り、脳波が整う感じ。



これまでは演奏する作品そのもののパワーにばかり目が行って、「楽器の力」ということを気に留めなかった。(アコースティックの楽器は生もので、個体差とか、木の質とか、メーカーによる魅力の違いとか、そういったことにはもちろん興味はあったのだけれど)




アーユルヴェーダにおいての木

アーユルヴェーダ(インドの伝統医学)でも木のぬくもりを感じることが、(=自然を感じること)治療の一環になっているということを聞いたことがあります。※治療の一環=心身のバランスを整える

そのときは、木のぬくもりを感じることっていうのは、ログハウスに住むとか、檜風呂に入るとか森で散歩するとか、そういうことかなぁと思っていけれど、ピアノやヴァイオリンに触れたり、演奏したりすることも同じ、と今は思う。灯台もと暗し。とはまさにこのこと…

都心にいると自然に触れる機会が少ない。だから、楽器を弾くことで、木のぬくもりを感じることで、心身のバランスを整えられたらと思う。


練習が思ったようにいかない日には、ピアノの音を純粋に感じて、まずは心と体の調律もできたらと思う。
ピアノから自然のエネルギ―をもらって、元気でいられたらと思う。





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