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「だから僕の好きな人は」

7月から地元に帰省している。
今日、好きな人と2人でご飯に行った。
友人の紹介で半年前に知り合って、今日で会うのは2回目。

でもその好きな人には自分には到底叶うはずのない、高スペックな恋人がいて、そのことは初めて会った時から知っていたし、本当は一緒に遊んだりしたかったけど、既に相手がいるから、2人で遊びに誘うことはしなかった。ふとした時に会いたいなと思っていたけど、時間が経つにつれて、その子への好きという気持ちは少しずつ消えていった。

それに4月からは地元を離れて、県外で一人暮らしを始めて、仕事も何かと忙しいから、その人のことを思うこともさらに減っていった。でも、仕事や赴任先での暮らしに慣れ始めた6月からは、心や時間にも余裕が出てきて、ふとした時にその子のことを考えるようになった。その時に「ああ、あの子のことが好きだったんだな」と自分の気持ちに気がついた。でも、地元には年末まで帰れないから、直ぐに会うことはできないし、思うだけ辛いから、その子のことは考えないようにして、勉強や仕事に昇華した。

しかし、その数日後に、交通事故にあって、療養のため地元に戻ることになった。地元に帰れることがわかった時に、真っ先にその子のことが頭に浮かんで、会いたいなと思った。その瞬間、抑えていたその子への気になる気持ちは「好き」という感情に変わったと確信した。

そして今日、半年ぶりに会った。やっぱり話していて楽しいし、話の波長も合うし、もっとこの時間が長く続けば良いのにと思ったし、これっきりではなく2人で色んな所に行きたい、遊びたいなと感じた。

それでも現実はそう甘くはなく、その子からたまに発せられる恋人の話や結婚を見据えて付き合っているんだという話が、耳を伝って確かに聞こえる。それと頼んでもないけど、僕の恋愛相談にも乗って頂いた。多分、無機質で暇さえあれば将来の夢に向けての準備や勉強しかしていない自分を心配してくれたのだろう。「今好きな人はいるの?」君はそう聞く。「いないよ」と平静を装って僕は答える。本当は「いるよ、○○○ちゃんだよ」と言いたい。恋人が既にいる君にその思いを伝えると、僕は正式に振られてスッキリするだろう。でも君には余計な気遣いや迷惑をかけてしまう。だから、本当のことは言えなかった。別れ際に「じゃあ○○○君に彼女ができたら教えてよ!」君はいう。「直ぐにはできないよ」と苦笑いで僕は答える。「本当は君のことが好きなんだ」と言いたかった。でも言えない。解散して家に帰って素直に気持ちを伝えられなかったことを何回も悔いた。

今日きりで君のことを忘れようと思っても、時間が経つごとに君の良いところはたくさん出てくるし、好きなところはさらに好きになる。忘れることなんてできないよ。帰り際に僕は君に迷惑をかけない程度に「僕のタイプは○○○ちゃんみたいな人だよ」と伝えた。すると君は少し謙遜した後に、「○○○くんはかっこいいからすぐに良い人ができるよ」と言った。「だから僕の好きな人は君なんだけどな」と心の中で呟いた。

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