さよならシャボン(35) cross
Story : Espresso
Illustration : Yuki Kurosawa
足を止めた少年の頭上を二筋の閃光が流れていく
交差する
線と線が、点と点が、光と光が
長い長い時間を掛けて、何光年何億光年離れているかわからない、そんな途方もない距離を縮めていく
接近するまでかかる時間は途轍もないのに、交わる時間、交わっていられる時間はほんの僅かでしかない
正に、星の瞬くような一瞬だ
交わりは刹那、直後から永遠の別れを表す
然しそんな別れも愛おしい、それが自然の摂理、あるがままの姿
交差した光は互いの光を受けてまた色が変わっていく
別の光と交差する時には、以前の光はそこにはない
居なくなったわけではないのに、なんとなくの寂しさが胸に吹き込んでくる
けれど、変化は悪いものではない
彼らはまた新しい光になり、新しい光を創るのだろう
足元を見ると靴紐が解けていた
両足の靴紐を解き直し、結び直した少年は淡々と、深い藍色の中へ走り出した
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「さよならシャボン」チーム
https://note.com/kuroyuyuyu/m/meb0c4b5b53eb
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