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NO MORE 計画分娩 というお話

2019年春、わたしは第一子を計画分娩で出産した。出産直後はとにかく辛かった印象が強烈に残り、あまり思い出さないようにしてきたが、あれから一年半近く経ち、今度はどんどん薄れていく記憶の中で覚えておきたいこと、忘れてはいけないと思うことをnoteに記録しておこうと思う。

・  計画分娩を選んだ理由

当時夫はアメリカで単身赴任中。何とか立ち会い出産をする方法がないかと出産ブログを読み漁っているうちに、計画分娩という言葉を知った。
出産予定日の1週間〜2週間前にあらかじめ予定日を決め、自然の陣痛を待たずに促進剤を打ち、人工的に陣痛を起こそうというものだ。それなら夫も前もって会社に休みをもらい帰国することが出来る。予定日よりさらに早めに産まれる場合は間に合わないが、それでも自然に陣痛がくるのを待つより立ち会える可能性はぐんと高くなる。

出産経験のある友人にその話をすると、促進剤はとにかく痛い、麻酔無しでなんて止めた方がいいと脅された。里帰り先の産院は自然分娩推しの先生で、無痛分娩はやっていなかった。初産なので痛み自体が自然な陣痛の痛みなのか、促進剤からくるものかなんてきっとわからない。どちらにせよ痛いのであれば前もって予定日が決まっていた方がいい。せっかくの友人のアドバイスを聞かず計画分娩を決めた。

・  産院への相談

里帰り先の先生に相談すると、「あ、いいよ~」とあっさりとOKの返事。
その軽い返事にぬか喜びしたのも束の間、年配の助産師さんからは「あまり早く出さない方がいいわよ」「赤ちゃんは1日でも長くお腹にいる方がいい」と言われ、心がざわついた。

赤ちゃんのお腹の中の1日は外の世界の1週間分にも相当すると言われる。助産師さんの言うことはもっともで、赤ちゃんは本来の予定日までは1日でも長くお腹にいた方がいいのかもしれない。

親のエゴで予定日を早めてしまっていいのだろうか…不安はずっと消えなかった。それでも我が子が産まれる瞬間や直後の、まさに命のはじまりの貴重な時間を夫と共有したかった。

・  入院1日目

入院当日の朝の内診では子宮口1cm(全開は10cm)。
点滴で促進剤投与を開始するも軽めの生理痛程度。夫は常にベッド脇にいて良い話し相手になってくれた。夕方には点滴を中止し、翌日に持ち越し。

入院から出産まで何日もかかる人がいることは知っていたが、何故か自分は大丈夫、その日のうちに産まれるだろうという謎の自信があったため、お産が全然進む気配が無いことに大きなショックと不安を覚えた。

・  入院2日目

朝から再び促進剤投与を再開。
午前中は赤ちゃんへのビデオメッセージを撮るほど余裕があったが、点滴量を増やしたからか、前日とは裏腹に徐々に痛みが増す。
重い生理痛のような痛みから「いたいいたいいたい」と大声を出さずにはいられない激痛へ。夫が腰にボールを当てて必死にサポートしてくれる。
この日も夕方で点滴を中止し、翌日へ。子宮口は夜の段階でまだ4~5cmと言われ絶望する。

明日も今日と同じ痛みを味わわないといけないという恐怖。親の都合なんて関係なくお腹の赤ちゃんはまだ出てきたくなかったんだ…という自責の念。
産まれる日が1日遅くなるごとに夫と新生児の息子が触れ合える時間が短くなるという申し訳なさ。色んな感情が混ざり合ってベッドの上で号泣した。

・  入院3日目

入院3日目の朝、ようやく促進剤に合わせて本陣痛が来るようになった。前日の痛みの比ではない激痛が超短時間に襲ってくる。

前日のメンタルを朝から引きずっていると、助産師さんから「赤ちゃんは親の都合じゃなく自分のタイミングで出てくるからね」と追い打ちをかけられる。それ今言わなくても…。

その後破水⇒子宮口全開⇒分娩台へと進み、お昼過ぎには無事出産。本陣痛から出産までは約4時間。そこだけ見ればスピード出産だ。破水してからは余りに死に物狂いで最早よく覚えていない。

ただ3日間を通して、夫が何時間も励ましの言葉と共に陣痛の痛みに合わせてずっとボールを押し続けてくれたこと、そしてわたしの悶絶する姿を心配し、助産師さんを何度も必死に呼びに行ってくれた姿は鮮明に覚えている。

産まれた瞬間から勢いよく泣く我が子。
家族3人になった瞬間を全員で過ごせたことが何よりも幸せだった。

・一年半後に振り返って

あれから一年半。
出産の痛みは綺麗さっぱり忘れてしまった。
一方、促進剤の痛みを翌日へ持ち越すことへの恐怖心、いつ産まれるかわからない不安、お産が進まず夫にも赤ちゃんにも申し訳ないと思う気持ち、助産師さんの言葉に対するざわざわした感情は今も心に残っている。

立ち会い出産のために計画分娩を選択したことは全く後悔していないが、正直NO MOREだ。もし第二子を授かれたときに再び夫が単身赴任の身であったら、わたしは一体どんな選択をするのだろう。誰か、わたしに良案を授けてほしい。


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