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ニュージーランド、エネルギー危機! ガス、そして電気が不足

2024年8月19日

ニュージーランドの電力需要のピークは、暖房の使用が増える冬、つまり今の時期です。ところがガスの不足、それに伴い電力の不足が危惧されています。

そもそもニュージーランドの電力供給は、水力発電が60%、地熱発電が15~20%、風力発電が5~10%と、80%以上が再生可能エネルギーによるものです(太陽光発電は、日本ほど普及していません)。残りの約15%が火力発電で、特に需要が高まる冬や水力発電のための水量が不足したりした時に使用されます。この火力発電の燃料が天然ガスと一部は石炭となります。

パーマストンノース近郊のウインドファーム

これまで天然ガスはニュージーランド国内で生産されていたため、輸入に頼ることなく(かつ輸出もしていない)、自国でまかなっていました。ところが、このガスの生産が予測より早く減ってきてしまっていることが明らかになったのです。私はてっきり、ガス輸出大国のオーストラリアからは輸入していると思い込んでいたのですが、パイプラインは存在しないとのこと。政府は、火力発電の燃料となるLNG(液化天然ガス)の輸入を検討しているそうです。新しいガス田をこれから開拓するにしても、膨大な時間と莫大な費用が必要です。さらに、自然破壊という面を考える必要があります。

この直近のガス不足危機に直面して、ガスを大量に使用する企業が減産や一時停止を発表しています。例えば、メタノールを生産するMethanex社は10月末まで生産を停止するとのこと。また王子製紙では、このままエネルギーコストが高騰すれば、オークランドにある紙のリサイクル工場を閉鎖することになるかもしれないと発表しています。ガスから生産するアンモニアの生産が停止すれば、肥料として使っている農家に影響が及びます。割高な輸入ガスによる発電は、一般家庭の電気代を直撃することになります。

ガス不足の報道を見ても、「我が家はオール電化だから関係ない」と無知にも思っていました。ニュージーランドでは火力が強いガスのコンロ、そしてお湯がずっと出るガス温水器が人気で、新築の家がガスを導入する傾向がありますが、私は5年前にリノベーションをした時、電気のままにこだわりました。阪神大震災の経験者として、ガスは復旧が遅くて、家族で銭湯に入るために行列した時の寒さが身に染みていたからです。それに、ガスという化石燃料が遅かれ早かれ切り替えられることになる、と言われていたのもあります。ところが、この記事を書くためにあれこれ調べて、ニュージーランドにおけるガスの重要性を初めて知り、「このままじゃニュージーランドは大変じゃないか」とびっくりしたのでした(火力発電の燃料は石油がメインと思い込んでいたし)。いまさらながら、ニュージーランドのエネルギーについて知り、考えるきっかけとなる、いい勉強の機会になりました。

電気のお陰で、エアコンでぬくぬくして、湿気が高くなる冬に除湿器で快適で、毎日洗濯をして、乾燥機でふわふわのタオルを使い、オーブンを使って料理をして、熱いお湯でシャワーを浴びている私がおこがましいのですが、今の生活ができることに感謝をして、無駄をできる範囲でなくした生活を心掛けていこうと改めて思いました。

オークランドは急に春めいてきて
チューリップが一気に咲いてきました。
春はすぐそこ。

参照資料:
Coughlan, T. (2024, August 19). NZ Herald. https://www.nzherald.co.nz/nz/politics/government-told-to-reduce-household-gas-usage-to-save-industry/

Dempsey, D., Haas, J., & Peer*, R. (2024, August 13). NZ is running out of gas – literally. That’s good for the climate, but it’s bad news for the economy. RNZ. https://www.rnz.co.nz/news/on-the-inside/524994/nz-is-running-out-of-gas-literally-that-s-good-for-the-climate-but-it-s-bad-news-for-the-economy

The New Zealand gas market. (2023, April 17). Electricity Authority. https://www.ea.govt.nz/news/eye-on-electricity/the-new-zealand-gas-market/


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