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蝶が舞う庭

ニュージーランドの人々が愛する蝶、Monarch Butterfly(和名:オオカバマダラ)のこの夏最初の蛹が我が家の庭で巣立っていきました。

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これは、Monarch butterflyの餌となる、Swan plant(和名:フウセントウワタ)です。今の季節は、よく見ると、かわいらしい小さな花が付いています。秋になると、風船のようにふくらんだボール状の実が成って、Swanのボディ部分のように見える、ということで英語名が付けられています。日本では一年草扱いのようですが、温暖なオークランドではすくすく育って、そのままにしていたら2メートルほどの木になって大きくなりすぎたので、この木は引っこ抜きました。

キウイの人は、Monarch butterflyを庭に呼ぶために、わざわざこのSwan plantをガーデンセンターで買って、植え付けます。あんまりさえないプラントで、夏になるとアブラムシがびっしりつくし、スワン型の風船が割れて種が飛ぶと、あちこちにこぼれ種で増えます。しかも、キョウチクトウの仲間なので、枝からの白い汁にかぶれる心配があります。モンシロチョウだって同じ蝶なのに、人間が食物として育てる植物を食べてしまうから害虫として目の敵にされているわけで、わざわざお金を出して苗を買って、蝶の餌にするために庭の貴重なスペースを使うなんて、意味が分からない、と以前の私は思っていました。

それなのに、なぜ、今、Swan plantが我が家の庭にあるかというと、数年前に、スーパーマーケットの販促キャンペーンで配られた種の中に、このSwan plantの種がたまたま入っていたからでした。そして、種が手に入ってしまうと、植えたくなってしまうのが種まき好きの宿命です。ということで、もらったほんの数粒の種をまいてみたら、出てきた苗にさっそく蝶がやってきて、あっという間に食い尽くされて、近所の知り合いに幼虫を何匹か里子に出したり、ハチに食べられないようにネットを掛けて守ったり、ついつい、毎シーズン、気になってしまうことになってしまいました。Swan plantの葉がなくなったら、カボチャが代わりになる、と聞いてやってみたら、蛹には無事になったのでほっとしていたのですが、蝶に羽化することができず、黒くなったままで終わったこともありました。

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今シーズンは、もう、手間は掛けない、もう我が家には来なくていい、と思っていました。ですが、ガーデニング雑誌の付録だった「Bee friendly wild flowers」の種を2年前に蒔いたコーナーに、一緒に植えておいたこぼれ種からのSwan plantに、ふと見ると、幼虫がちゃんと育っていて、やっぱりうれしくて、毎日、横に置いた白いベンチでしばらく眺めるのが日課になっています。(上の写真の正面の枝に幼虫、右側に蛹がいます)。

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はらぺこあおむしならぬ、毒々しい黄色と黒のはらぺこしましまむしで、米粒より小さい卵から、小さな小さな幼虫が生まれて、もりもりSwan plantを食べつくして、どんどん大きくなっていきます。小さいころは葉の裏に隠れていますが、我が家の庭ではハチの餌食になることが多いのか、いつの間にか姿が消えることもよくあります。無事に逃げ延びた幼虫は、Swan plantの毒を体内に貯め込むことで本当に毒を持っていて、ある程度大きくなると、食べる敵がいなくなるようで、のんびりとしています。

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そして、ひらがなの「し」の形で逆さまになると、1、2日で、この幼虫のカラーコーディネートからは想像もつかない、エメラルドグリーンに金色の粒の飾りが付いた蛹に変身します。

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ほら! 以前、たまたま幼虫から蛹になる瞬間を目撃したことがあります。ふるふると体が震え始めて、どんどん蛹に代わっていく様子は、仮面ライダーの変身のようでした。

ちなみにこの写真の幼虫は、なんだか結構活動的で、幼虫時代も時々姿を消して、あれー旅立ってしまったかーと思うことがあったので、ベンチに座ったら、蛹になる準備をしている姿に再会できて、うれしかったのでした。あと数日で、蝶になると思います。

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殻は防水加工がしてあるようで、雨に濡れても大丈夫。そして、外側の殻が透明になって、蝶の模様が見えてきたら、羽化はいよいよ翌日のはずです。

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パチパチパチ、無事に蝶になることができました。これは、昨日、撮影した写真です。羽がすっかり伸びて、飛び立つまでに、数時間掛かります。今日は雨だったので、ちゃんと分かって、この日を選んだのでしょうか?

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しばらくして見に行ったら、枝のてっぺんまで上っていました。

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何回も羽ばたく練習をして、いよいよ旅立ちの時です。午前中に羽化して、夕方に見に行ったら、無事に飛び立っていました。達者でな―。

蝶が旅立った後のSwan plantは、葉が食べつくされて、ツンツルテンですが、また葉が出てきます(そして、またツンツルテンにされる)。調べてみたら、風船状の実をフラワーアレンジメントに取り入れたり、茶花にも使えるそうなので、今度、風船ができたら、試してみようと思います。一つ、ひとつ、知っていることが増えるのがガーデニングの楽しみです。



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