『夜市』読書感想文
こんばんは、水瀬綾乃です。
今夜は恒川光太郎さんの『夜市』の感想です。
人生2冊目の角川ホラー文庫。
恒川光太郎さんの作品に誘われ、またもや読んでしまいました。
表題作の『夜市』は、以前からさわりの内容を知っていたのですが、ホラー文庫ということで読むことはないだろうと思っていました。
『秋の牢獄』を知らなければ今でも読むことはなかったと思いますが、あまりに好みの作家さんだったので、手に取った次第です。
やはり、以下はネタバレになりますので未読の方で読みたい方はスルーされて下さい。
そんな『夜市』。
今作もホラーというよりはファンタジーっぽいお話ではあるものの、夜市が開かれる場所は本来なら人が足を踏み入れてはならない領域です。
そんな場所に入ってしまえば、出る時にはそれなりの代償は免れないわけで…。
毎度のことながら自分ならどうしただろう?と考えます。人間は誰しも自分が一番可愛いものです。
最初に夜市に足を踏み入れた時、裕司がそうしたように弟を犠牲にする以外の選択肢を見つけられたでしょうか?
でもそうやって自分だけが助かって望んだ才能を手に入れても年を経るごとに募るのは後悔と虚しさ。
そして、ある決意と共に裕司は再び夜市を訪れ…。
哀しい結末になることは予感していました。
裕司は自分が蒔いた種だから、その結果も因果応報と思えるけれど、なぜその場にいずみを誘ったのでしょうか?
冷たい言い方になってしまうけど、今度は自分が背負ってきた同じ重荷を、いずみに背負わせることになるとは思わなかったのでしょうか?
裕司は自分勝手が、すぎやしないか?
でもそれは、杞憂でした。
いずみが強い人だったのか、それとも夜市を抜け出せた者は皆そうなのか、わからないけれど…。
どこか余韻を残す、読み手に負荷を与えない終わり方でした。
次の『風の古道』も、また不思議なお話。
これもまた人が無闇に足を踏み入れてはならない場所が描かれていました。
そして主人公は元の世界に戻るために、彼の場合は友人の死という重すぎる代償を差し出さなければならない事態になってしまったのです。
興味本位で怪異な場所にまた行ったばかりに…。
自分ひとり戻っても悔やんでも悔やみきれない。
やるせないです。
どちらも哀しい話でしたが独特な雰囲気に惹かれてまた恒川光太郎さんの作品を読みたくなりました。
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