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【放送大学/まとめノート】哲学・思想を今考えるー歴史の中でー(’23)第1回 哲学の精神と根本の問い / 魚住孝至教授

はじめに

この科目は哲学・思想の導入科目。
西洋哲学だけにとどまらず、もっと視野をひろく持ちたい。日本・アメリカ先住民等、いろんな思想を扱いたい。広範囲な領域において、哲学・思想界隈で、今、どんなことが問題になっているのか。それを示せたらいいな!という方向性だそうです(^^)/

根本的な問い:「何ゆえに、われわれは、今、ここに、このように生きているのか?」


キーワード

ソクラテス 無知の知 「何ゆえに」の問い 現代の宇宙論 考える葦

目標&ポイント 

1.ソクラテスの思想。
2.「何ゆえに」の問いについて考える。
3.考える葦


1.哲学の精神ーソクラテスの「無知の知」

哲学は、プラトンがソクラテスの独特な知恵を指して、他の知恵(sophia)とは異なるものとして、知恵を愛するphilosophiaと名づけたところから始まる。

ソクラテスは人々と問答をして、人々や自分自身が思い込んでいる事柄(ドグサ)を本当にそうなのかと問い直し、吟味した。
「よく生きること」を問う。
捕まろうが死刑になろうが、彼的には「よく生きたい!」が優先(悲)紀元前399年没70歳。
プラトンが『ソクラテスの弁明』で彼の知恵を伝えるとともに、彼独自の思想を展開。哲学が確立した。

ソクラテスが広場で若者相手にやってたのは、「生き方」についての問答。
問答=言葉において真実を究明する方法

「(真理である)善美の事柄についてはその人も自分も知らないが、その人は知らないのに知っているように思っているのに対して、私は知らないから知らないと思っている。この違いによって、私の方が知恵があることになるらしい」(21D)ことを見出した。

ソクラテスは人びとのドグサ(思い込み)を吟味して真実を探求することが神から与えられている仕事(天職)だと考えるようになった。
ドグサ=個人の思い込みという以上に世間の通念という意味合いが強い。

プラトンは、哲学が独特の知恵であることを「第七書簡」で次のように述べる。
「哲学は他の学問のように言葉では表現され得ないもので、(教える者と学ぶ者とは)生活を共にしながら、その問題の事柄を取り上げて、数多くの話し合いを重ねていく内に、いわば飛び火によって点ぜられる灯火のように、突然に学ぶ者の魂の内に生じ、それからは、生じたもの自体が自らを育てていくという性質のものなのです」(341D)
専門的な知識ではなく、自ら問うことにより、点じられる火。その火をどのように燃やしていくか、あるいは消すのかは、各自にかかっている。だから哲学は、知恵を愛する精神は、各自が燃やし、展開していくのである。「よく生きること」を目指して、本来命がけの問いかけとして自らが問い続けていくべきものなのである。

カント(『純粋理性批判』)
人が学ぶことができるのは「哲学」ではなく「哲学すること

西周
「哲学」を「哲学」と訳していたが、後に「希(動詞)」がとれて「哲学」になった。教授にはこれが「意味合いが変わってしまったように思える」のだそう。だって哲学は名詞じゃない、動詞(「すること」)だ!
「哲学する精神を受け継ぐべきであろう」とのことです(^^)/


2.哲学・思想根本的な問いー「何ゆえに」の問い

思えばソクラテスは生きることのWhyに答えられないことを自覚していることを「無知の知」と言っていた。彼は、それゆえに「よく生きる」ことを目指してドグサを吟味しようとした。Whyの問いを根底において、今まで思い込んでいたあり様すべてをドグサとして吟味することが必要ではないか。Whatの問いによって解明された膨大な知識を、改めてWhyの立場から問い直せば、それにいかに対処するかが見えてくるのではないか。Howの問いもWhyの問いを根底に置けば、安易な実用的、実利的な価値にとらわれない生き方が考えられるのではないか。こう考えると、哲学の精神は、Whyの問いを根底にして、すべてを問い直すことだとも考えられる。

アリストテレス
哲学する者は「何ゆえ」を問い、「第一の原因」を問う形而上学を問題にするという。

・・・・ん??
魚住先生「ここではWhyの問いが、経験とは次元を異にする哲学の精神につながることだけを確認しておくことにする」とのこと。
なんとなくライル先生の『心の概念』を思い出します。


3.われわれが生きる宇宙ー現代科学が明らかにした宇宙論

『宇宙図』(2018)
現代科学で解明された内容を一般向けにわかりやすいように国立天文台を中心とした研究者たちがまとめたもの。

ん? これのこと? 宝島社?

いやいや、こっちでした。科学技術広報財団。

宇宙図ってポスター状のもののようです。

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「宇宙図」は「太陽系図」、「光図」とデザインを揃えた3部作の1つです。壁に3枚のポスターが並べて貼れば、アート作品を鑑賞する雰囲気でサイエンスを学ぶことが出来ます。
※日本語版のみ。
(2024年3月第4版発行)

科学技術広報財団

4.人間は考える葦である

「?」「Why」「なぜ」「なにゆえに」を問うのが哲学。

人間は一本の葦にすぎない。自然の中でも一番弱いものだ。だが、それは考える葦である。これを押しつぶすには、全宇宙は武装する必要はない。一吹きの蒸気、一滴の水でも、これを殺すに十分である。しかし宇宙が人間を押しつぶしても、人間はなお、殺すものより尊いであろう。人間は死ぬこと、宇宙が自分よりまさっていることを知っているからである。だから、わたしたちの尊厳のすべては考えることの内にある。・・・だから、正しく考えるように努めようではないか。ここに道徳の原理がある。

『パンセ』ブランシュヴィック版断章347

人間は「何ゆえに」と問うことができるゆえに、宇宙みたいに大きな謎についても考えることができる。正しく考えてよく生きる。これが哲学の精神。

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