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位相群について


はじめに

位相群とは、群構造を持ち、かつ位相構造も同時に持つような集合のことです。物理学にも応用されているようです(よく知りませんが、特殊相対性理論におけるローレンツ群など)。以下において、群を説明した後、位相について説明し、位相群を定義します。

群の定義と性質

群とは、対称性を記述するような代数構造のことです。歴史的にはガロアが代数方程式(多項式=0)の解の公式の存在の有無を判定するために用いたことが発端だそうです(5次以上の代数方程式には解の公式は存在しない)。

定義
集合 $${G}$$ 上に演算 $${G\times G\rightarrow G}$$ があり、 $${\left(x,y\right)\in G\times G}$$ の演算後の値を $${x\cdot y}$$ と書く。この演算が次の3条件を満たすとき $${G}$$ はこの演算について、群であるという。
(G1) 任意の$${x,y,z\in G}$$について、$${(x\cdot y)\cdot z = x\cdot (y\cdot z)}$$ (結合法則)
(G2) 任意の $${x\in G}$$ に対して、 $${e\cdot x = x\cdot e = x}$$ を満たす $${e\in G}$$ が存在する。($${e}$$は$${x}$$に依存しない。) $${e}$$を$${G}$$ の単位元という。
(G3) 任意の$${x\in G}$$に対して、$${y_x\cdot x = x\cdot y_x = e}$$を満たす。$${y_x\in G}$$が存在する。( $${y_x}$$ は $${x}$$ に依存して決まる。)この$${y_x}$$を$${x}$$の逆元という。

定義
群$${G}$$の部分集合$${H}$$が$${G}$$と同じ演算の下にそれ自体もひとつの群をなすとき、$${H}$$は$${G}$$の部分群であるという。

$${H}$$を$${G}$$の部分群であるとし、$${G}$$上の2項関係 ~ を

$$
{x\sim y \iff xH = yH}
$$

と定義すれば、 $${\sim}$$ は同値関係である。ここで、 $${xH = \lbrace xa| a\in H\rbrace}$$ である。この同値関係による$${x\in G}$$の同値類は$${\xi_x}$$ は、

$$
\xi_x =\lbrace y\in G|xH=yH\rbrace
$$

である。$${G}$$の$${\sim}$$による商集合$${\lbrace\xi_x | x\in G\rbrace}$$ を$${G/H}$$で表す。同値類$${\xi_x}$$を右-剰余類という。

$${x, y\in G}$$が同じ剰余類に属するためには、$${x^{-1}y\in H}$$であることが必要充分である。このとき$${x}$$と$${y}$$とは$${H}$$を法として合同であると言い、

$$
x\equiv y (\rm{mod} \ \ \ H)
$$

と表記する。

定義
$${G}$$ の部分群 $${N}$$ が 任意の $${a\in G}$$ に対して、 $${aNa^{-1} = N \ \ (\iff aN=Na)}$$ を満たすとき、 $${N}$$ は $${G}$$ の正規部分群であるという。

群 $${G}$$ の正規部分群 $${N}$$ について、 $${G/N}$$ は群をなす。 $${x\in G}$$ の剰余類を $${\xi_x}$$ と書くことにすれば、 $${\xi_x = xN}$$ である。 $${\xi_x, \xi_y\in G}$$ に対して、

$$
(\xi_x)\cdot (\xi_y) = \xi_{x\cdot y}, \ \ \ (\xi_x)^{-1}=\xi_{x^{-1}}
$$

すなわち、

$$
(xN)\cdot (yN) = (x\cdot y)N,  (xN)^{-1}=x^{-1}N
$$

となる演算を定めれば、 $${G/N}$$ はこの演算の下に群となり、これらの演算は、well-defined(代表元の選択方法に依存せずに演算結果が一意に定まる)である。
証明) 2通りの代表元で、商群の中においては同じ元$${x\equiv x^{\prime} \ (mod \ N)}$$、$${y\equiv y^{\prime} \ (mod \ N)}$$があったとする。このとき、$${xy(x^{\prime}y^{\prime})^{-1}=xy(y^{\prime})^{-1}(x^{\prime})^{-1}\in xN(x^{\prime})^{-1}=N}$$であるから、$${xy\equiv x^{\prime}y^{\prime} \ (mod \ N)}$$したがって、$${\xi_{x\cdot y}=\xi_{x^{\prime}\cdot y^{\prime}}}$$。また、逆元に関しては、$${x(x^{\prime})^{-1}\in N}$$から、$${((x^{\prime})^{-1})^{\prime}x^{-1}\in N}$$ より、$${x^{-1}\equiv (x^{\prime})^{-1} \ (mod \ N)}$$。したがって、 $${{\xi_{x^{-1}}=\xi_{{x^{\prime}}^{-1}}}}$$である。

$${G/N}$$ を $${G}$$ の $${N}$$ に関する商群とよぶ。 $${G/N}$$ の単位元は $${N}$$、 $${xN}$$ の逆元は、 $${x^{-1}N}$$ である。

$${G}$$, $${G^{\prime}}$$ を群(乗法演算をともに $${\cdot}$$ で記す)とし、写像 $${\varphi : G\rightarrow G^{\prime}}$$ が

$$
\varphi (x\cdot y) = \varphi (x)\cdot \varphi (y),   x,y \in G
$$

を満たすとき、 $${\phi}$$ は準同型写像であるという。特に、$${\varphi}$$ が全単射でもある場合は、これを同型写像という。

$${G}$$ と $${G^{\prime}}$$ の間になにか同型写像が存在するとき、 $${G}$$ と $${G^{\prime}}$$ はこの写像を媒介として、同型であるといい、これを $${G\simeq G^{\prime}}$$ という記号で表記する。

$${G}$$ と $${G^{\prime}}$$ の単位元をそれぞれ $${e}$$ と $${e^{\prime}}$$ と書けば、準同型写像 $${\varphi : G\rightarrow G^{\prime}}$$ に対して $${\varphi (e) = e^{\prime}}$$ であり、 $${\varphi (x^{-1})= \varphi(x)^{-1} (x\in G)}$$ である。また $${\varphi}$$ の像 $${\varphi (G)}$$ は $${G^{\prime}}$$ の部分群である。

準同型写像 $${\varphi: G\rightarrow G^{\prime}}$$ に対して、集合

$$
Ker\varphi = \lbrace x\in G | \varphi (x)=e^{\prime} \rbrace
$$

は正規部分群であり、これを $${\phi}$$ の核と呼ぶ。
(任意の $${x\in G}$$ に対して、 $${y\in x Ker\varphi x^{-1}}$$ とすると、ある $${a\in Ker\varphi}$$ が存在して、 $${y=xax^{-1}}$$ 。このとき $${\varphi (xax^{-1})=\varphi (x)\varphi (a)\varphi (x^{-1})=\varphi (x)e^{\prime}\varphi (x)^{-1}=e^{\prime}}$$ より、 $${y\in Ker\varphi}$$ 。逆に $${y\in Ker\varphi}$$ とすると、$${y=xx^{-1}yxx^{-1}}$$ かつ $${\varphi (xyx^{\prime}) = e^{\prime}}$$ なので、$${y\in xKer\varphi x^{-1}}$$)

$${1^{\circ}}$$ $${G}$$, $${G^{\prime}}$$ は群、$${\varphi : G\rightarrow G^{\prime}}$$は準同型写像でかつ全射であるとする。$${N}$$ が $${G}$$ の正規部分群ならば、$${\varphi (N)}$$は$${G^{\prime}}$$の正規部分群である。
証明) 任意の $${y\in G^{\prime}}$$ に対して、$${y=\varphi (x)}$$ を満たす $${x\in G}$$ が存在する。$${x^{-1}Nx\subset N}$$ であるから

$$
y\varphi (N) y^{-1}=\varphi(x)\varphi(N)\varphi(x)^{-1}=\varphi(xNx^{-1})\subset \varphi (N)
$$

ゆえに$${\varphi(N)}$$は$${G}$$の正規部分群である。
$${2^{\circ}}$$ $${G}$$ は群、$${N}$$をその正規部分群とし、写像$${\pi : G\rightarrow G/N}$$を$${\pi : x\mapsto xN \ (x\in G)}$$と定義する。これを自然な写像または標準的写像という。$${\pi}$$ は準同型写像で、$${\pi (N)}$$は$${G/N}$$ の正規部分群である。
証明) $${\pi}$$ は全射で、$${N}$$が$${G}$$の正規部分群なので$${1^{\circ}}$$ から導かれる。

定理 1.1
$${G}$$, $${G^{\prime}}$$ は群、 $${\varphi : G\rightarrow G^{\prime}}$$ は準同型写像とする。このとき $${G/Ker\varphi}$$と$${\varphi(G)}$$ とは群として同型である。同型写像は

$$
\Phi : x\cdot Ker\varphi \mapsto \varphi(x), \ \ x\in G
$$

によって与えられる。
証明) 全射性: 任意の$${y=\varphi (x)}$$ に対し、$${x\cdot Ker\varphi}$$ をとれば、 $${\Phi(x\cdot Ker\varphi)=\varphi (x)}$$ より全射。
単射性: $${\Phi (x\cdot Ker\varphi)=\Phi (x^{\prime}\cdot Ker\varphi)}$$ とすると$${\varphi(x)=\varphi(x^{\prime})}$$ で、 $${e^{\prime}=\varphi(x)\varphi(x^{\prime})=\varphi(x {x^{\prime}}^{-1})}$$ なので、$${x {x^{\prime}}^{-1} \in Ker\varphi}$$よって、 $${xKer\varphi=x^{\prime}Ker\varphi}$$ である。
さらに、 $${\Phi}$$ は準同型写像である。実際、 $${x, x^{\prime}}$$ に対して、

$$
\begin{array}{}\Phi(xKer\varphi\cdot x^{\prime}Ker\varphi) &=&\Phi(xx^{\prime}Ker\varphi) \\ &=&\varphi(x\cdot x^{\prime})\\&=&\varphi(x)\varphi(x^{\prime})\\&=&\Phi(xKer\varphi)\cdot \Phi(x^{\prime}Ker\varphi)\end{array}
$$

であるから、 $${\Phi}$$ は準同型写像である。したがって、

$$
G/Ker\varphi \simeq \varphi(G)
$$

定理 1.2
$${G}$$, $${G^{\prime}}$$ は群、 $${\varphi: G\rightarrow G^{\prime}}$$は準同型全射とする。$${H^{\prime}}$$を$${G^{\prime}}$$の正規部分群とすれば、$${H=\varphi^{-1}(H^{\prime})}$$ は $${G}$$の正規部分群で

$$
G/H\simeq G^{\prime}/H^{\prime}
$$

証明) 写像 $${\Phi: G\rightarrow G^{\prime}/H^{\prime}}$$ を

$$
\Phi: x\mapsto \varphi(x)H^{\prime}
$$

と定義すると、$${\Phi}$$ は全射の準同型である。($${yH^{\prime}\in G^{\prime}/H^{\prime}}$$とすると、$${\varphi}$$ の全射性から $${y=\varphi(x)}$$となる$${x\in G}$$ がある。この$${x}$$をとればよい。) 
$${\Phi}$$ の核は、

$$
\begin{array}{} Ker\Phi &=& \lbrace x\in G | \Phi(x)=H^{\prime} \rbrace \\&=& \lbrace x\in G | \varphi(x)H^{\prime} = H^{\prime} \rbrace \ \\ &=& \lbrace x\in G | \varphi(x)\in H^{\prime} \rbrace \\ &=& \varphi^{-1}(H^{\prime}) \\&=& H \end{array}
$$

である。したがって、定理 1.1 により、

$$
G/H\simeq G^{\prime}/H^{\prime}
$$

系 1.1
$${G}$$ は群、$${H}$$と$${N}$$は$${G}$$ の正規部分群で、$${N\subset H}$$ とする。このとき

$$
(G/N)/(H/N)\simeq G/H
$$

証明) $${G^{\prime} = G/N}$$ 、$${H^{\prime}=H/N}$$ とする。 $${H^{\prime}}$$は$${G^{\prime}}$$ の正規部分群である。 $${\pi: G\rightarrow G/N}$$を自然な写像 $${x\mapsto xN}$$ として、これを定理1.2の $${\varphi}$$ に見立てれば、

$$
\pi^{-1}(H^{\prime})=\lbrace g\in G | \pi(g)=H^{\prime} \rbrace = \lbrace g\in G | gN=H/N \rbrace
$$

で、 $${N\subset H}$$ より、

$$
\pi^{-1}(H^{\prime})=\lbrace g\in G | g\in H \rbrace = H
$$

よって、定理 1.2 より、

$$
G/H\simeq G^{\prime}/H^{\prime} = (G/N)/(H/N)
$$

位相の定義

位相とは、集合に属する要素の点の近さを記述するための概念です。集合と構造のペアで記述され、構造は、開集合の集まりによって定義されます。通常のユークリッド空間においては開球が点の近さを記述していることから、ユークリッド位相の構造は開球の集まりとなります(より厳密にいえば、開球で覆われる集合の集まり)。

定義
$${S}$$を空でないひとつの集合とする。$${S}$$の部分集合系$${\mathscr{O}}$$が次の3つの条件を満たすとき、$${\mathscr{O}}$$は$${S}$$にひとつの位相構造を定める、または$${\mathscr{O}}$$は$${S}$$におけるひとつの位相であるという。
(O1) $${S\in \mathscr{O}}$$および$${\empty\in\mathscr{O}}$$
(O2) $${O_1\in\mathscr{O}}$$、$${O_2\in\mathscr{O}}$$ならば$${O_1\cap O_2\in\mathscr{O}}$$(帰納的に有限個の合算として定義しても同値である。)
(O3) $${(O_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}}$$を$${\mathscr{O}}$$の元からなる任意の集合族とすると、$${{\cup_{\lambda\in\Lambda}}O_\lambda\in\mathscr{O}}$$

一つの位相構造が定められた集合$${S}$$すなわち、ひとつの位相$${\mathscr{O}}$$の与えられた集合$${S}$$を位相空間という。

$${(S,\mathscr{O})}$$をひとつの位相空間とするとき、$${\mathscr{O}}$$に属する$${S}$$の部分集合をこの位相空間の開集合という。

ユークリッド空間の位相
位相空間の実例として、ユークリッド空間の位相について述べる。

$${n}$$を任意の自然数としたとき、実数全体の集合の$${n}$$個の直積$${\mathbb{R}\times\mathbb{R}\times\dots\times\mathbb{R}}$$を$${\mathbb{R}^n}$$と書くことにする。つまり

$$
\mathbb{R}^n=\{(a_1,a_2,\dots, a_n)\ :  a_i\in\mathbb{R} (i=1,\dots, n)\}
$$

である。$${\mathbb{R}^n}$$の2つの元$${x=(x_1,x_2,\dots,x_n)}$$、$${x=(y_1,y_2,\dots,y_n)}$$ $${x_i, y_i\in\mathbb{R} \ \ (i=1,\dots,n)}$$に対し、その距離$${d(x,y)}$$を

$$
d(x,y)=\sqrt{\displaystyle\sum_{i=1}^{n}(x_i-y_i)^2}
$$

で定義する。集合$${\mathbb{R}^n}$$にこのような距離を導入したとき、$${\mathbb{R}^n}$$を$${n}$$次元ユークリッド空間と呼ぶ。

ここで、ユークリッド空間に導入される位相の準備のため、$${\mathbb{R}^n}$$の開球の概念を次のように定義する。$${a}$$を$${\mathbb{R}^n}$$の一つの点、$${\epsilon}$$をひとつの実数とするとき、集合

$$
\{x : x\in \mathbb{R}^n, d(a, x)<\epsilon\}
$$

を$${a}$$を中心、$${\epsilon}$$を半径とする$${\mathbb{R}^n}$$の開球という。これを $${B(a;\epsilon)}$$で表す。

$${\mathbb{R}^n}$$の部分集合の集まり、$${\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$を次のように定義する。

$$
\begin{array}{}
\mathscr{O}(\mathbb{R}^n) = \{O\subset\mathbb{R}^n : \forall a\in O \ \ \exists\epsilon>0 \ s.t.\ B(a;\epsilon)\subset O \}
\end{array}
$$

定理
$${\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$は位相の3条件(O1)~(O3)を満たす。
証明) (O1) $${\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$ の要素の定義としては、

$$
\forall a\in O \Rightarrow \exists\epsilon>0 \ s.t.\ B(a;\epsilon)\subset O
$$

であるが、空集合においては左辺の主張がそもそも偽でありしたがって、全体の命題としては真となるため、空集合は$${\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$に含まれる。
(通常は、$${\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$の要素を自身の内点の集合と一致するものとして定義しているため、少々証明が煩雑になってしまった。)
参考:  

また、どのような$${a}$$と$${\epsilon}$$をとってきても、$${B(a;\epsilon)}$$は$${\mathbb{R}^n}$$の部分集合であるから、$${\mathbb{R}^n}$$は$${\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$の要素である。
(O2) $${O_1\dots,O_k\in \mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$とし、$${\cap_{i=1}^k O_i =O}$$とする。(O1)より$${O\neq\empty}$$のときのみ考えればよい。$${a}$$を$${O}$$の任意の点とすれば、各$${i \ (1\le i \le k)}$$に対し、$${a\in O_i}$$で、$${O_i\in \mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$であるから、$${B(a;\epsilon_i)\subset O_i}$$となるような正数$${\epsilon_i}$$が存在する。そこで、$${\epsilon=min\{\epsilon_1,\dots, \epsilon_k\}}$$とおけば、各$${i}$$に対して、$${B(a;\epsilon)\subset B(a;\epsilon_i)}$$であるから、$${B(a;\epsilon)\subset O_i}$$。ゆえに$${B(a;\epsilon)\subset \cap_{i=1}^kO_i=O}$$。すなわち$${O\in \mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$である。
(O3) $${O_{\lambda}\in\mathscr{O}(\mathbb{R}^n) \ (\lambda\in\Lambda)}$$とし、$${\cup_{\lambda\in\Lambda}O_{\lambda}=O}$$とする。この場合も$${O\neq \empty}$$のときだけ考えればよい。$${a}$$を$${O}$$の任意の点とすれば、$${a\in O_{\lambda}}$$となる$${\lambda\in\Lambda}$$が存在し、$${O_{\lambda}\in\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$であるから、$${B(a;\epsilon)\subset O_{\lambda}}$$となる正数$${\epsilon}$$がある。$${O_{\lambda}\subset O}$$であるから、$${B(a;\epsilon)\subset O}$$。したがって、$${O\in \mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$。

定理から、$${\mathscr{O}(\mathbb{R}^n)}$$は$${\mathbb{R}^n}$$の位相構造を定める。

位相群の定義と例

定義
集合 $${G}$$ が次の3条件を満たすとき、それは位相群であるという。
(TG-1) $${G}$$ は群である。
(TG-2) $${G}$$ は位相空間である。
(TG-3) $${G}$$ 上で定義されている群の演算が、与えられた位相に関して連続である。

$${G}$$ 上の群の演算を仮に 
乗法演算 : $${(x,y)\mapsto x\cdot y \ \ [G\times G\rightarrow G]}$$
逆元の演算 : $${x\mapsto x^{-1} \ \ [G\rightarrow G]}$$
とすれば、(TG-3) の意味するところは、この二つが連続であることである。これは演算

$$
(x,y)\mapsto x\cdot y^{-1} \ \ [G\times G\rightarrow G]
$$

が連続であることと同値である。

例:
$${G=\mathbb{R}}$$ とし、その上に定まる位相はユークリッド位相であるとする。このとき$${\mathbb{R}}$$は加法についての位相群となる。
証明) 加法に関する連続性を示す。$${f(x,y)=x+y}$$とする。任意の点$${(a,b)}$$での連続性を示す。任意の$${\epsilon}$$に対して、$${\delta=\epsilon^{2}/4}$$ とすればよい。

$${G=\mathbb{R}^l}$$ とし、その上にEuclid位相を定めれば、 $${\mathbb{R}^l}$$ はベクトルの加法演算についての位相群($${l}$$ 次元ベクトル群という(これは初めて聞いた!))となる。

$${G=\{z\in \mathbb{C} : |z|=1 \}}$$ は複素数の乗法と、$${\mathbb{C}}$$ から導入される相対位相(開集合が、$${\mathbb{C}}$$の開集合と$${G=\{z\in \mathbb{C} : |z|=1 \}}$$との共通部分となるような位相)について位相群となる。

$${(n\times n)}$$-型の実行列の全体は行列の和に関して可換群、またそのうち正則行列の全体 $${GL}$$ は行列の積について非可換群を成し、いずれも $${{\mathbb{R}}^{n^2}}$$ のユークリッド位相の下に位相群となる。また、$${GL}$$ の元のうち行列式の値が $${1}$$ に等しいものの全体$${SL}$$ は、行列の積についての群をなし、位相群である。

おわりに

こちらの記事は、参考文献 [1] の勉強ついでに執筆したものです。自分なりの備忘録としているため、読みにくい箇所がありますがご容赦ください。質問や間違いなどありましたらお知らせいただけるとありがたいです。気が向けば続きを書きたいと思っています。

参考文献

 [1] 丸山徹, "群上の調和解析", 丸善出版, 2023
 [2] 松坂和夫, "集合・位相入門", 岩波書店, 1968(初版)

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