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【エッセイ】 女郎蜘蛛の天下

 ジョロウグモばかりの年である。

 こんな年は珍しく、例年、コガネグモの天下であるが、それがどういうわけか揺らいだらしい。一体、何が要因かなど、誰の興味も引かぬ故、誰も知らないままである。

 短絡的に結びつければ、異常な暑さ、アブの発生、ジョロウグモの天下と、こうなるが、これも十数年で初めての出来事、再びその要因がまみえるが、十数年後のことであれば、人の命は短すぎ、やはりジョロウグモの天下の謎は、誰も知らないままである。

 異常と言えば、昨夜の網戸、闇に活動しないはずのスズメバチなどいたり、巣の場所を忘れたか、それとも何者かにその巣が壊されたのか、心なしか羽音も小さく、あの恐ろしい様子はないのだった。

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黒澤伊織@小説
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