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儚き命のヘビトンボ

 見たことのない虫は、恐ろしいものである。特にそれが大きく、大量発生しているときなど、これは本能にがつんと来るような恐怖がある。

 ヘビトンボという虫は、幼虫の頃、清い流れに住むために、一般の暮らしではまず見かけない、奇妙な造形と大きさを持った虫で、その大きさは十センチほど、マイマイカブリのような体に、セミの如き、しかし二枚の羽を備え、その大きな顎に噛まれれば、その箇所は腫れ上がるという恐ろしさから、ついた二つ名は「川ムカデ」。

 これだけで十分恐ろしいというのに、加えてこれが大量発生、網戸に十匹も張り付いている様を見れば、叫びたくなること請け合いで、早く季節が過ぎぬものかと、祈りたくなるようである。

 しかし、これも夏の性か、このヘビトンボ、一度羽化してしまえば寿命は短く、数日とも十数日とも、儚いといえば儚いが、儚くて良しと思える虫の一つではある。

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